はじめに
さて今回は テレキャスター・シンラインをfender大名鑑から取り上げてみたいと思います。歴史的にも非常に興味深いものです。
セミアコースティック化できそうな機種
CBSに買収される前、フェンダーがホロウ・ボディーのエレクトリック・ギターを作るなどとは想像もできなかった。レオがエレクトリック弦楽器のデザインにこだわり、いちずに製造技術を守り続けたからだ。しかし新体制になると、フェンダーの研究開発路線は変更される。フェンダー経営陣は1966年初めにコロナドを発表した後、ギターのラインアップを見直して、セミアコースティック化できそうな機種を探した。コンター加工を施さず縁も丸く削っていないボディーのモデルといえば1つしかない。 テレキャスターだ。 テレキャスター・カスタムのボディーには1959年、ハイエンド機種のセミアコースティックに倣ってバインディングが施されている。 従ってホロウ・ボディー版
を作ってもおかしくないと上層部は考えた。こうして1967年初め、完全なホロウ・ボディーのプロトタイプが制作される。製法は当時のフェンダー製アコースティックと同じで、 表板はスプルース単板、裏板はゼブラウッド。 fホールがないためソリッドボディーに見えるが、非常に軽量だった。 このデザインをなぜ製品化しなかったのかは謎である。重いネックを付けるとギター全体のバランスが崩れるとデザイナーたちが考えたのかもしれない。
軽さとサウンドはセミ・アコースティックという楽器が完成
1968年初め、ロジャー・ロスマイズルがセミ・アコースティック・テレキャスターを考案する。 同年夏発表のテレキャスターシンライン(Telecaster Thinline) である。 助手を務めたのは、フェンダーの木工所およびボディー部門で働くヴァージリオ 「ベイブ」シモーニ。 ロスマイズルはリッケンバッカー時代に開発した独自の技術を新デザインに注ぎ込んだ。マホガニーまたはアッシュ材のソリッドな単板をボディーの形にカットし、 表側にひっくり返す。 次に、 裏側から音を共鳴させるための空洞をくり抜く。 このとき用いるルーティング加工装置で、同時にボディー・フロントにホールを開ける仕組みだ。 続いて、木材をはぎ合わせた平らな板をホロウ・ボディーの裏に接着する。 こうして、外見と丈夫さはソリッドボディー、 軽さとサウンドはセミ・アコースティックという楽器が完成した。
歓迎の声
フィル・クビキがフェンダー研究開発部門でプロトタイプを制作する一方、ロジャー・ロスマイズルはサウンド・ホールが1つでもバランスが取れるように優美なピックガードをデザインした。 電装品はスタンダードなテレキャスターと同じく、シングルコイル・ピックアップ2基にシンプルなトーン/ヴォリューム・コントロール。ネックはオール・メイプルだったが、1950年代のメイプル・ネックと異なりメイプル・キャップの指板をネックの表面に張り付けたため、マホガニー材のスカンク・ストライプとヘッド部のプラグは省かれた。ただしプレイヤーたちの声に応えて、1968年末には1950年代のワンピース・メイプル・ネックに変更している。ヘッドには1960年代末スタイルのフェンダー・デカール(社名ロゴとモデル名 TELECASTERのみ) を張り、上からポリエステル・ラッカーのクリア・コートをかけた。 1968年7月、ナチュラルフィニッシュのマホガニー材またはアッシュ材のボディーで登場。 同年10月にはサンバーストがスタンダード・オプションに導入される。 5% の追加料金でデュポン社の塗料を使ったカスタム・フィニッシュも注文できた。フェンダーのラインアップに加わったテレキャスターシンラインは、歓迎の声で迎えられた。 軽量ボディーにテレキャスターの性能をすべて備えた上、明るく弾むようなサウンドを響かせたからだ。
テレキャスター・シンライン特徴
テレキャスター・シンライン(Telecaster Thinline)は、フェンダー(Fender)の代表的なギターモデルであるテレキャスターの派生モデルであり、その名の通り「薄いテレキャスター」という意味合いを持ちます。最も顕著な特徴は、セミホロウ(Semi-Hollow)構造のボディです。
以下に、テレキャスター・シンラインの主な特徴を詳しく解説します。
1. セミホロウボディ構造:
- これがシンライン最大の特徴です。ソリッドボディのテレキャスターとは異なり、ボディの一部が空洞になっています。通常、ボディのトップ材の下に空洞が設けられ、サウンドホール(Fホール)が設けられているモデルが多いです。
- この構造により、ソリッドボディにはない独特のサウンド特性と演奏感を生み出します。
2. サウンドの特徴:
- 豊かな倍音と空気感: セミホロウ構造により、ギターの 共鳴が増し、豊かな倍音と広がりのある、エアリーなサウンドが得られます。ソリッドボディに比べて、より暖かく、メロウなトーンが特徴です。
- サスティーンの向上: ボディ全体の振動が増幅されるため、サスティーンがやや長くなる傾向があります。
- フィードバックの可能性: 大音量での演奏時には、セミホロウ構造ゆえにフィードバックが起こりやすい場合があります。しかし、これを意図的に利用して独特のサウンドを生み出すギタリストもいます。
3. 軽量化:
- ボディ内部が空洞になっている分、ソリッドボディのテレキャスターよりも一般的に軽量です。長時間の演奏における負担を軽減できます。
4. 演奏感:
- 軽量であるため、取り回しが良いと感じるプレイヤーが多いです。
- ボディの 振動が演奏者にも伝わりやすく、楽器との一体感を感じやすいという意見もあります。
5. 外観:
- Fホール: セミホロウ構造の象徴とも言えるFホールが、独特のルックスを与えます。伝統的なテレキャスターとは異なる、やや洗練された印象を持つモデルもあります。
- ピックガード: 通常のテレキャスターと同様の形状のピックガードが採用されていますが、ボディの形状に合わせてデザインされている場合があります。
6. ピックアップ:
- 搭載されるピックアップはモデルによって様々です。
- 伝統的なシングルコイルピックアップを搭載したモデルは、テレキャスターらしいシャープで歯切れの良いサウンドに、セミホロウボディの暖かさと倍音が加わったサウンドが特徴です。
- ハムバッカーピックアップを搭載したモデルもあり、よりパワフルで太いサウンドが得られます。特に、ワイドレンジハムバッカーと呼ばれる、よりクリアでレンジの広いハムバッカーがシンラインによく採用されます。
7. バリエーション:
- 初期のシンラインはシングルコイルピックアップを搭載したモデルが主流でしたが、後にハムバッカーを搭載したモデルも登場しました。
- ボディ材やネック材、指板材の組み合わせによって、サウンドや演奏感が異なります。
まとめ
フェンダー黄金期に匹敵する数少ない楽器の1つとして、発表後たちまちミュージシャンたちに支持されている。ストラトキャスターの愛用者として知られるカーティス・メイフィールドは、1960年代末から70年代初めにかけてシンラインをメイン・ギターにしていた。
同時期、 スライ・ストーンもシンラインを頻繁に弾いている。
1971年にギブソン式のハムバッキングピックアップを採用したことから、当初の魅力はほとんど失われてしまったが、 テレキャスターシンラインは今でもロジャー・ロスマイズルの残した名作として高く評価されている。
テレキャスター・シンラインは、伝統的なテレキャスターのサウンドとプレイヤビリティを維持しつつ、セミホロウ構造による独特のサウンドと軽量化を実現した魅力的なギターです。その特徴的なサウンドとルックスから、多くのギタリストに愛されています。
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