はじめに
エレキギターの歴史の中で、数多くの名器が生まれてきましたが、「シンプルでありながら圧倒的な存在感を放つギター」として、ギブソン・レスポール・ジュニア(Gibson Les Paul Junior)は特別な地位を築いています。
1954年に誕生したこのギターは、当初は学生向けの廉価モデルとして開発されましたが、そのシンプルな構造が生み出す「生々しく荒々しいロックなトーン」は、多くのギタリストを魅了し、時代を超えて愛され続けています。
今回は、レスポール・ジュニアの歴史とその魅力、そして著名な使用ギタリストたちについて紐解いていきます!
レスポール・ジュニアの誕生
1954年、初心者向けギターとして登場
ミニマムのサウンドギブソンレスポール・ジュニア、300ドル以上するレスポール・カスタムはぜいたく品で、購入できる層は限られていた。
ギブソンは市場のすそ野を広げるため、低価格モデルの開発に着手。
ギブソンは1950年代、フェンダーの「テレキャスター」や「ストラトキャスター」の登場によって、マーケットシェアを脅かされていました。
そこで、「若いギタリストや学生向けに手頃な価格で購入できるギターを作ろう」というコンセプトのもと、1954年に「レスポール・ジュニア」が誕生しました。
主なスペック(1954年モデル)
1954年、フェンダー・エスクワイアの対抗機種としてレスポール・ジュニアを発売する。 1ピックアップ、装飾を一切省いたジュニアの価格は120ドルだった。
価格を抑えたとはいえ、 ギブソンには名門としての誇りがある。ネックをねじ止めしたような安っぽいギターを作るつもりはなかった。
ギブソンはレスポール・モデルの重要な仕様をすべてジュニアに採用する。 ボディーとネックの素材は、ソリッド・ボディー・ギター用の最高級木材の一つ、ホンジュラス・マホガニー。指板は伝統的なローズウッド材。由緒正しいギブソン・ヘッド。ピックアップはP-90。
項目 | スペック |
---|---|
ボディ | マホガニー(単板) |
ネック | マホガニー(セットネック) |
指板 | ローズウッド |
ピックアップ | P-90(シングルコイル)×1 |
ブリッジ | ラップアラウンド・ブリッジ |
コントロール | 1ボリューム、1トーン |
フィニッシュ | サンバースト(後にTVイエローも登場) |
「シンプルな構造でコストを抑えつつも、ギブソンの伝統的なマホガニーボディによる豊かなサウンド」を実現したモデルだったのです。
1954年、レスポール・ジュニアの特別モデルとして登場
レスポール・モデルから受け継がなかったのは、 メイプル材のアーチトップと華やかなゴールド・フィニッシュだけである。 しかしここでも一工夫あった。 ジュニア発表から約1年後の1954年末、 基本モデルのサンバーストに加え「ライムド・マホガニー(limed mahogany)」と呼ばれるイエローのフィニッシュ・オプションが加わる。
レスポール TV と呼ばれるこのモデルは、 白黒テレビの画面でくっきり見えるように考え出されたとも言われている。 あるいは、時代を先取りした名前のフェンダー・「テレ」 キャスターに対抗して、 ハイテクなイメージの名前を選んだのかもしれない。1955年にはレスポール・シリーズの新たなモデル、レスポール・スペシャルを発売。 レスポール・モデルとジュニアの間に位置する中位機種で、 ジュニアの2ピックアップ版だった。
シンプルなスペック
項目 | スペック(1950年代オリジナルモデル) |
---|---|
ボディ | マホガニー(単板) |
ネック | マホガニー(セットネック) |
指板 | ローズウッド |
スケール | 24.75インチ |
フレット数 | 22フレット |
ピックアップ | P-90(シングルコイル)×1 |
ブリッジ | ラップアラウンド・ブリッジ |
コントロール | 1ボリューム、1トーン |
フィニッシュ | TVイエロー |
● レスポール・ジュニアと基本的なスペックは同じ!
●ただし「TVイエロー」というカラーリングだけでなく、一部モデルでは「TV Model」と刻印されたものも存在。
レスポール・ジュニアの進化
1958年:ダブルカッタウェイ(DC)モデル登場
1954年のオリジナルモデルはシングルカッタウェイ(SC)でしたが、1958年にはダブルカッタウェイ(DC)モデルが登場しました。
【SCとDCの違い】
- SC(シングルカッタウェイ) → ボディがコンパクトで、低音が豊か
- DC(ダブルカッタウェイ) → ハイポジションの演奏性が向上
このDCモデルは、よりハイポジションのプレイアビリティを向上させたことで、ロックギタリストから高い支持を受けるようになります。
レスポール・ジュニアの魅力
シンプルだからこその「直球ロックサウンド」
レスポール・ジュニアの最大の特徴は、P-90ピックアップ1基のみのシンプルな構造です。
- P-90のパワフルなシングルコイルサウンド → 太く荒々しいトーン
- コントロールはボリューム & トーンのみ → 直感的に操作可能
- ラップアラウンドブリッジ → 弦振動をダイレクトに伝える
この潔いシンプルな設計が、「ピッキングや手元のニュアンスをダイレクトに反映する、生々しいサウンド」を生み出しています。
● 「余計なものはいらない。ただシンプルに、そしてワイルドにロックを鳴らしたい。」そんなギタリストに最適なモデルです!
軽量で取り回しの良いボディ
- マホガニー単板ボディで軽量(約3kg前後)
- 長時間演奏しても疲れにくい!
- ライブで動き回るロックギタリストに最適!
特にストラトやレスポール・スタンダードと比べると、軽くて持ちやすいのも大きなメリットです。
伝説のロックギタリストが愛用
レスポール・ジュニアを愛用した有名ギタリストたち
ギタリスト | 特徴 |
---|---|
ジョン・レノン(The Beatles) | TVイエローのDCモデルを愛用 |
キース・リチャーズ(The Rolling Stones) | ワイルドなロックサウンドを奏でる |
レスリー・ウェスト(Mountain) | 太く歪んだP-90サウンド |
ミック・ジョーンズ(The Clash) | パンクロックシーンで活躍 |
ビリー・ジョー・アームストロング(Green Day) | ギブソンからシグネチャーモデルも発売 |
レスリー・ウェスト ビリー・ジョー・アームストロング
●「伝説的ロックギタリストに愛されたギター」というだけでも、その魅力が伝わりますね!
現代のレスポール・ジュニア
現在でも、ギブソンはレスポール・ジュニアの復刻版を販売しており、多くのギタリストが使用しています。
現行モデル(2024年時点)
- Les Paul Junior Original Collection → 50年代仕様を再現
- Les Paul Junior Tribute → コストパフォーマンスに優れたモデル
- Les Paul Junior Billie Joe Armstrong Signature → Green Dayのビリー・ジョー仕様
また、エピフォン(Epiphone)からも手頃な価格のレスポール・ジュニアが販売されており、初心者でも手に入れやすいのも魅力です。
変遷
ヴィンテージ・レスポール ジュニアの価格は近年高騰しています。 シンプルなスタイルこそ最高のサウンドを生み出す、とプレイヤーたちが気づいたからでしょう。弦をブリッジに巻きつけるスタッド式ブリッジ/テイルピースは、弦の振動を直接ボディーに伝える。マホガニー材単板のボディーにマホガニー材のネックをセットした構造は、ギターの重量を軽くし、温かく歯切れのよいサウンドを生み出す。 P-90 ピックアップの配置は完璧で、太くパワフルなリード・サウンドを奏で、 ヴォリューム・コントロールを絞ってピックアップのゲインを低くすれば美しく澄んだリズム・ギターを響かせる。 レスポール・スペシャルも同じ長所を備えているが、 フロント・ピックアップが追加されているため、より深みのあるジャズ向きの音が出る。 ブルースを弾くなら、やはりシンプルで迫力あるサウンドのジュニアだろう。
まとめ:レスポール・ジュニアが愛され続ける理由
魅力ポイント | 詳細 |
---|---|
シンプルな設計 | P-90×1 & ボリューム/トーンのみ |
ダイレクトなサウンド | ピッキングニュアンスがそのまま出る |
軽量ボディ | 長時間演奏でも疲れにくい |
有名ギタリストの愛用 | ジョン・レノン、キース・リチャーズ、ビリー・ジョーなど |
現代でも入手可能 | ギブソン&エピフォンが復刻版を販売 |
「ギターに余計なものはいらない。ただロックを鳴らしたい。」
そんなギタリストには、レスポール・ジュニアが最高の相棒になるでしょう!
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