はじめに
ギターエフェクターの世界には、時代を超えて愛され続けている名機が数多くあります。そのひとつが、MAXON(マクソン)社のオーバードライブペダル「OD-820」です。今回は、このOD-820の魅力に迫りつつ、その歴史や特徴、使用シーンなどを詳しくご紹介したいと思います。
OD-820の誕生秘話
OD-820は、1999年にMAXONからリリースされた名機オーバードライブペダルです。しかし、その誕生の経緯には意外な事実が隠されていました。
Klonに着想を得た設計
当時人気を博していたKlon Centaurのサウンドに着想を得て、OD-820は開発されました。Klonの持つナチュラルな歪み味を再現しつつ、独自の特徴を付加することに成功しています。
具体的には、TS系オーバードライブ回路の採用と、電源電圧の昇圧、クリーンミックス機構の搭載などが行われました。これにより、Klonに似たサウンドを実現しつつ、より自在な音作りが可能になったのです。
当初は情報不足だった名機
しかし、発売当初はOD-820がKlonにインスパイアされた事実があまり知られていませんでした。そのため、その実力が地味すぎて見過ごされがちでした。
ところが、実際にOD-820を手にしたギタリストから次第に高い評価が上がるようになります。純粋な音の良さとギターにマッチする扱いやすさが認められ、プロ・アマ問わず愛用者を増やしていったのです。
OD-820の2大モデル
長年に渡って生産されてきたOD-820には、初期モデルと現行モデルの2つの系統が存在します。どちらも本質的な良さは共通していますが、若干の違いもあります。
初期モデル
初期モデルのOD-820は、TS系の特徴である中域に集まった音色が特徴的でした。クリーミーでスムーズな歪み味は、ブルースやロックなどに最適です。
外観は、9Vアダプター使用を前提とした作りで、電池ボックスが付いていません。ビンテージマニアからの高い人気を誇ります。
現行モデル
現在生産されているOD-820は、初期モデルからプレゼンス感と力強さがアップしています。歪み味は控えめながらもしっかりとしたキャラクターがあり、テクニカルなロックにも対応できます。
外観は電池ボックスが追加され、設置性が向上しています。電池の使用も可能になり、使い勝手が良くなりました。初心者にも扱いやすいモデルです。
OD-820の魅力を探る
ここまでOD-820の概要をご紹介してきましたが、この名機の本当の魅力はサウンド性能とユーザビリティの高さにあります。
絶妙なオーバードライブサウンド
OD-820の最大の魅力は、その絶妙なオーバードライブサウンドにあります。TS系の持つクリーミーな歪み味が心地よく、中域の締まりも絶妙です。
ギターの低域はしっかり残り、高域もくすみすぎることなく透明感があります。従ってダイナミックレンジが広く、クリーンからヘビーまで幅広い使用が可能なのが特徴です。
ブースターとしても優秀
OD-820は歪みペダルとしてだけでなく、クリーンブースターとしても優秀な性能を発揮します。
DRIVEつまみを最小にすれば完全にクリーンな状態になり、アンプをプッシュするための最適なブースターとして機能します。THRシリーズなどのロープロファイルアンプにマッチする使い勝手は、抜群の高評価を得ています。
使用シーン | レビュー |
---|---|
ブルース/ロック | クリーミーな歪み味とクリーンサウンドのバランスが良く、絶妙なサウンドメイクが可能 |
ハイゲイン | アンプのキャラを活かしたアグレッシブサウンドが得られ、ブリッジミュートもしっかり演奏可能 |
ブースター | 低域の厚みと高域の透明感があり、クリーンアンプをパワフルに歪ませられる |
OD-820を使いこなす
OD-820の本当の魅力を引き出すには、適切な使い方とセッティングが重要です。ここではその実践的なテクニックを解説します。
ゲインの設定
- DRIVE 0~3: クリーンブースターとして使用可能。オーバードライブサウンドとの割合を調整する際に便利
- DRIVE 3~6: 絶妙なオーバードライブサウンドが得られる最適なレンジ。キャラクターの違いを楽しめる
- DRIVE 6~: 力強いハイゲインサウンドが得られる。ブリッジピッキングでも弾き心地が良い
トーンコントロールの解説
OD-820のトーンコントロールには癖があり、中域を強調するような設定が効果的です。すると音に奥行きと濃厚さが加わり、ギターの音色がよりいっそう立体的になります。
また、ゲインを下げた状態でトーンを少し下げると、アコースティックサウンドのようなニュアンスある音作りも可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。OD-820は、その歴史と音の素晴らしさから、今なお根強い人気と支持を集めている名機です。独特の雰囲気と、幅広い使用シーンをカバーするサウンドメイキングの自由度は、本物の名品だけにできる魅力です。
最近ではメーカーごとに様々なオーバードライブペダルが発売されていますが、OD-820が持つ品格とその魂は誰もが認めるところでしょう。いつの時代でも活躍し続けるテクニカル・サウンドツールこそ、この名機の真骨頂だと言えます。
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