知られざる歴史と進化:ムスタング&ムスタングベース深掘り

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ムスタング

1964年7月、 待望のモデルがフェンダーのラインアップに加わる。 初心者向けのスチューデントモデルとプロフェッショナルシリーズの間を埋める重要な機種、ムスタング (Mustang) です。

189ドル50セント(現在のレートで計算すると、189ドル50セントは約27,694円)という価格は、デュオ・ソニックの159ドル50セントとテレキャスターの209ドル50セントのほぼ中間に位置し、 1ピックアップのプロフェッショナルシリーズ、エスクワイアよりは20ドル高い。 ムスタングは手頃に買えるギターとしてセミプロ・ミュージシャンの人気を集めることになる。

ムスタング 特徴

フェンダー・ムスタングは、その独特なルックスとサウンド、そして演奏性で、他のギターとは一線を画す魅力を持っています。

  • ムスタングの最も大きな特徴の一つが、24インチという短いスケール(ナットからブリッジまでの弦の長さ)です。
  • これにより、弦のテンションが緩くなり、押弦が楽になります。手の小さい方や、コードチェンジが多いプレイスタイルの方にとって非常に弾きやすいのが魅力です。
  • サウンド面では、甘く、丸みを帯びた、少しルーズなニュアンスを持ちます。倍音が豊かで、独特の粘り気のあるサウンドが特徴です。

2. ダイナミック・ビブラート・テイルピース:

  • 独特の形状をしたダイナミック・ビブラート・テイルピースを搭載しています。
  • 滑らかで独特なビブラート効果を生み出すことができ、他のトレモロシステムとは異なる個性的な表現が可能です。
  • 調整がややシビアな面もありますが、その独特のフィーリングを好むプレイヤーも多くいます。

3. スイッチング・システム:

  • 通常、2つのシングルコイルピックアップを搭載しており、それぞれに対応したオン/オフ/フェイズ・スイッチを備えています。
  • これらのスイッチの組み合わせによって、直列、並列、逆位相など、多彩なサウンドバリエーションを生み出すことができます。
  • 他のギターにはない独特のサウンドメイクが可能で、実験的なサウンドを求めるプレイヤーにも人気があります。

4. コンパクトなボディ:

  • 他のフェンダーギター(ストラトキャスターやテレキャスターなど)に比べて、小ぶりで軽量なボディを持っています。
  • 取り回しが良く、長時間の演奏でも疲れにくいというメリットがあります。

5. 個性的なルックス:

  • オフセットされたウェストラインを持つ独特のボディシェイプは、一目でムスタングとわかる個性的なルックスです。
  • 豊富なカラーバリエーションも魅力の一つです。

開発と誕生

ドン・ランドールはずいぶん前からトレモロ付きスチューデント・モデル・ギターの必要性を主張していた。それに応えてレオがやっと作り上げたのがムスタングである。基本的にはデュオ・ソニックにヴィブラート・ユニットを付けた構造だが、レオは開発に時間をかけた。彼が目指したのは手頃な価格のシンプルなトレモロだった。 機能性は落とさず、ボディーのルーティングを最小限に抑えてギターのトップに搭載できる装置だ。

レオは今回も才能を発揮し、 あらゆる要望を満たすムスタング・トレモロを完成させた。 ジャズマスター式のブリッジと単純化したブリッジ・サドルを備えたこのユニットは、激しいプレイに対応できるよう設計されていた。ボディーは当時のフェンダー様式に従い、 スタンダードなスチューデント・モデルのウエストのくびれをわずかにずらしたオフセット。

新しいボディー・シェイプを飾る新デザインのピックガードは、 テレキャスターと同じくボディー上部に沿って緩やかなカーブを描いている。 ピックガードの素材は、 トータスシェルまたは新スタイルのプラスチック製3プライ(ホワイト・パーロイド・トップ/黒/シンプルな白)。ヴォリューム/トーン・コントロールを搭載したコントロール・プレートはクローム製のため、ピックガード下にシールドを張る必要がなかった。

2基のピックアップはデュオ・ソニックのものと同じだが、 ピックアップ・セレクター1基ではなく、 スライディング・スイッチが2個付いている。これはリード/リズムのトーンセッティング用で、センター・ポジションにすれば「オフ」の設定も可能だった。

ムスタングのスタンダードフィニッシュは、ダコタ・レッド、オリンピック・ホワイト、ダフネ・ブルーのカラフルな3色から選ぶことができたが、注文を簡単にするため、レッド、ホワイト、ブルーという単純な名で呼ばれた。

ネック・スケールは、 ミュージックマスターやデュオソニックと同じ22.5インチのショートスケールと、わずかに長いジャガー式の24インチの2タイプが用意された。 勝利を収めたのはロング・スケールの方で、ショートスケールのムスタングはほとんど注文されなかった。新しいネックには、今では見慣れたラージ ・ ヘッドが付き、金文字黒縁のトランジション・ロゴが張られた。

1964年末までに、ムスタングに合わせてスチューデントモデルのミュージックマスターとデュオソニックが再設計され、 3モデルの外装が統一される。

絶妙のタイミングで発表されたムスタング

ムスタングはたちまち人気モデルとなった。 開発をせかしたドン・ランドールは正しかったのだ。

絶妙のタイミングで発表されたムスタングは、ライバル製品がひしめいていたスチューデントモデル ギター市場に参入し、安物の輸入製品を駆逐した。
1964年に入り、 アメリカのミュージック・シーンに対するイギリス勢の進攻が激しくなると、ギターの売り上げ数は史上最高に達した。 フェンダーは需要に応えようと奮闘する。 同年後半、 フラートン工場はムスタングの注文数に追いつくためフル稼働で生産を行った。

ムスタング・ベース

フェンダー・ムスタング・ベースは、そのコンパクトなサイズと独特のサウンドで、ギターと同様に個性的な魅力を持つベースです。主な特徴を以下にまとめました。

ムスタング・ベース特徴

1. ショートスケール:

  • ムスタング・ベースの最も顕著な特徴は、30インチという短いスケール(一般的なベースは34インチ)を採用していることです。
  • これにより、弦のテンションが低く、左手が届きやすいため、手の小さい方や初心者の方でも非常に演奏しやすいのが魅力です。ギターからの持ち替えもスムーズに行えます。
  • サウンド面では、太く、丸みを帯びた、暖かみのあるサウンドが特徴です。ロングスケールベースのような強烈なローエンドというよりは、中低域に重心のある、どこか懐かしい響きを持っています。

2. コンパクトなボディ:

  • ムスタング・ギターと同様に、ムスタング・ベースも小ぶりで軽量なボディを持っています。
  • 取り回しが非常に良く、長時間の演奏やライブパフォーマンスでも疲れにくいというメリットがあります。

3. ピックアップのバリエーション:

  • 初期のムスタング・ベースは、プレシジョンベースと同様のスプリットコイル・ピックアップを1基搭載したモデルが主流でした。
  • 後に、ジャズベースのようなシングルコイルピックアップを2基搭載したモデルや、PJタイプのピックアップレイアウト(プレシジョンベースタイプのスプリットコイルとジャズベースタイプのシングルコイルを組み合わせたもの)が登場し、サウンドバリエーションが広がりました。

4. シンプルなコントロール:

  • 一般的に、1ボリューム、1トーンというシンプルなコントロール を採用しています。
  • 直感的で扱いやすく、サウンドメイクも比較的容易です。

5. ダイナミック・ビブラート(一部モデル):

  • ムスタング・ギターほど一般的ではありませんが、一部のムスタング・ベースにはダイナミック・ビブラート・テイルピースが搭載されているモデルも存在します。
  • これにより、ベースにおいても独特のビブラート効果を加えることができます。

6. 個性的なルックス:

  • ムスタング・ギターの流れを汲む、オフセットされたウェストラインを持つ独特のボディシェイプは、他のベースにはない個性的なルックスです。
  • カラーバリエーションも豊富で、ファッション性も高いと言えます。

開発と誕生

1964年末、レオはベースの開発に取り掛かる。 スチューデント・モデル・シリーズを完結させるムスタング・ベースである。 30インチというショート・スケールのネックは、ヒット製品ムスタング・ギターの相棒として完璧だった。 また 「プロ仕様のスチューデント向けソリッド・ボディー・ベース」 という市場の隙間を埋めることにもなった。 当時は多くのメーカーが廉価モデルのベースギターを売り出していたが、 フェンダーは一歩遅れてこの分野に参入している。 最高級機種のトップ・メーカーという地位に満足していたのかもしれない。

レオはムスタング・ベース用に新しいスプリット・ピックアップを開発した。 プレシジョン搭載のものよりかなり小型だが、硬質の素晴らしいベーストーンを響かせる装置である。 ブリッジも新デザインで、完全に調整可能なブリッジサドル4基が大型のクロームプレートに載り、4本の弦を個別にミュートできるようになっていた。 ボディー・スタイルはムスタング・ギターとほぼ同じで、 コントロールはクローム・プレートに搭載。 満を持して登場したのが1966年7月である。

初期モデルのフィニッシュは、白いパーロイド製ピックガードを付けたレッドまたはブルー、あるいはトータスシェル・ピックガードを付けたホワイトの3種類だった。1969年5月、 ムスタング・ギター/ベースに新たな「コンペティション」モデルが登場する。 ボディー・フロントの下部を斜めに横切る鮮やかな「レーシング」ストライプが描かれ、 ヘッドをボディーと同色にペイントしたデザインだ。 レッド、ホワイト、ブルーに替わるこのフィニッシュは、コンペティション ・ レッド(メタリックレッド+ホワイト・ストライプ)、 コンペティション・オレンジ (ライトオレンジ+ダーク・オレンジ・ストライプ)、 コンペティション・バーガンディー(シェイデッド・メタリックブルー+ペールブルー・ストライプ)の3種類だった。

ムスタング・ベースは、初心者だけでなく小さな手のベテラン・プレイヤーたちにも支持された。 ザ・ローリング・ストーンズのビル・ワイマンもその1人で、 1969年から70年にかけてコンペティション・バーガンディーとコンペティション・オレンジを使っている。 小型で手頃な価格のムスタング・ベースは愛用者を増やし、1970年代末までにはパンクやニューウェイヴのジャンルで盛んに弾かれるようになった。

まとめ:

フェンダー・ムスタングは、ショートスケールによる演奏性の高さ、ダイナミック・ビブラートによる独特の表現力、そして多彩なサウンドバリエーションを生み出すスイッチングシステムが大きな特徴です。その個性的なルックスとサウンドは、他のギターにはない魅力を持っており、多くのギタリストにとって唯一無二の存在となっています。

ムスタング・ベースは、ショートスケールによる演奏性の高さ、コンパクトなボディによる取り回しの良さ、そしてモデルによって異なるピックアップレイアウトによるサウンドバリエーションが大きな特徴です。その独特のサウンドとルックスは、他のベースとは一線を画し、多くのベーシストに愛されています。

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