ギルドのセミアコースティック労働者たちのヒーロー
ギルドのセミアコースティックギターの歴史は、ジャズとロックンロールの隆盛期に深く結びついています。特に、スターファイア・シリーズはギルドのセミアコースティックギターの象徴であり、その歴史を語る上で欠かせません。
ギブソンやフェンダーが華やかなロック・スターたちの象徴だった時代、もう一つの名門ギターブランド、ギルドは、静かに、しかし確実に「働くギタリストたち」の相棒としての地位を確立していきました。彼らが作り出したセミアコースティックギター、スターファイア・シリーズは、まさに労働者たちのヒーローと呼ぶにふさわしい存在です。
1960年代、ライブハウスやツアーを転々としながら、一晩に何セットも演奏するブルースやR&Bのギタリストたちにとって、ギルドのセミアコは理想的な楽器でした。ソリッドギターの頑丈さと、アーチトップの豊かな響きを併せ持つ構造は、激しい演奏にも耐え、ハウリングを起こしにくい。また、独自のピックアップが奏でるウォームでクリアなサウンドは、どんなジャンルの音楽にもマッチしました。
派手さはないかもしれません。しかし、その信頼性と実用性は、毎日のようにギターを弾くプロフェッショナルたちから絶大な信頼を得ました。
歴史の始まりと初期モデル
1950年代末、ギルドはT-100と2ピックアップのT-100D を発表。 隠れた名器とされるアンプと共
に、ギルド ギターはロック/ブルースシーンに浸透していく。 スリムジム T-100D (Slim JimT-100D) の初期モデルは、シンラインのホロウ・ボディー・セミアコースティック。 その太いサウ
ンドは、ギブソン P-90によく似たシングルコイル・ピックアップ 「フリークエンシー・テスティッド(Frequency Tested)」2基が生み出していた。 軽量でプレイヤーの体によくなじむ T-100 / T-100D は、適切なアンプにつなげば十分大きな音で鳴った。
スターファイアの進化と黄金期
1960年代に入ると、ロックンロールやポップミュージックの需要が高まり、よりハウリングに強く、扱いやすい楽器が求められるようになりました。これに応える形で、1960年に最初のセミアコースティックモデル、スターファイアI、II、IIIが発表されました。これらのモデルは、薄いボディとセンターブロックを持つ構造が特徴で、ソリッドギターに近い演奏性と、アーチトップの豊かな響きを両立していました。
ロングスケールのセミアコースティック、スターファイアー(Starfire) が登場。 1963年には高性能のギルド製ハムバッカーが搭載される。 また、 ギブソン ES-335 に似たダブル・カッタウェイの姉妹モデルも発表された。 ギルドはセミホロウ・ボディーの名器、アリストクラット M-75 (AristocratM-75) も製作している。 シングルカッタウェイが施された小型ボディーは演奏しやすく、またセミソリッド構造とスプルース材単板を表板に採用したため、豊かなレスポンスが得られた。 スケール長 24 3/4インチ (約 62.9cm。ギルドのカタログによれば「新たな定番、 プロ仕様のショート・スケール」)、ゴールド・ハードウェア、ブロックインレイのM-75 は、1962年にカタログから姿を消すが、1967年にはブルースバード (Bluesbird) と名前を変えて
再発売。 おそらくブルース市場を直接狙った初のギターだろう。1995年ギルドはフェンダーに買収されるが、 ロード・アイランドのウェスターリー工場で30年以上受け継がれてきた伝統は、移転先のカリフォルニアでも脈々と息づいている。
1960年代中盤には、スターファイア・シリーズはさらなる進化を遂げます。特に、エレクトリック・ギターの市場でギルドの地位を確固たるものにしたのが、スターファイアIVとスターファイアVです。これらのモデルは、ダブル・カッタウェイのボディ形状と、ギルド独自の「ハムバッキング・ピックアップ(フランツ・ピックアップ)」を搭載し、当時のブルースやロックギタリストに愛用されました。
スターファイアIVは、
バディ・ガイやジェリー・ガルシア(Grateful Dead)たちに愛用され、そのウォームでクリーミーなサウンドは多くの名盤で聴くことができます。また、スターファイアVは、トレモロ・ユニットが追加され、より幅広い音楽ジャンルに対応できるモデルとして人気を博しました。
ギルドのブルース・ギター
繊細なサウンドを指先から紡ぎだすフィンガーピッキングの達人、ミシシッピ・ジョン・ハート。 初録音は1928年。 そのころは「ブラック・アニー (Black Annie)」と名付けた愛器を弾いていたが、メーカーも製造年も分かっていない。 1963年にフォーク・シーンに再登場したときは、自分の楽器さえ持たず、ギブソンJ-45やドブロなどを借りて演奏していた。 同年のニューポート・フォーク・フェスティバルに出演した後、ニューポート財団からギター購入の申し出を受ける。 ハートが選んだのはギルドのF-30だった[財団側がすすめたのは高価なマーティン 00-42だったという〕。 ハートは1960年代、 ギルドの広告にも登場している。
一方、 ギルドのエレクトリック・ギターを選んだブルース・ミュージシャンも多い。 バディ・ガイは1970年代から80年代にかけて、ナチュラル・マホガニー・フィニッシュのボディーにダブルカッタウェイを施したスターファイアーを愛用していた。 スターファイアーのデザインはギブソンの名器 ES-335 をベースにしているが、 ギルド製ハムバッカーが搭載されているため、 ギブソンとは異なる独特のサウンドが出る。 ガイはまた、1990年代にストラトキャスター党になる前は、 ギルドのソリッド・ボディー、ナイチンゲール (Nightingale) も愛用した。
ギルドのセミアコースティックギターの特徴
ギルドのセミアコースティックギターは、以下の特徴で知られています。
- 薄いボディとセンターブロック: ハウリングを抑制し、ソリッドギターに近い演奏性を実現します。
- 独自設計のピックアップ: ギルド独自のフランツ・ピックアップや、 later HB-1ピックアップは、ウォームでクリアなサウンドが特徴です。
- 職人による丁寧な製造: 高い品質基準で製造されており、耐久性と安定したサウンドが長年愛される理由です。
現代におけるギルドのセミアコースティックギター
1970年代以降、ギルドは経営母体を何度か変更しましたが、スターファイア・シリーズは現在も製造され続けています。近年では、ギルドの歴史的なモデルを忠実に再現した「 Newark St. Collection」などのラインナップも展開され、往年のファンだけでなく、新たな世代のプレイヤーにもその魅力が再認識されています。
ギルドのセミアコースティックギターは、その独特のサウンドと、ジャズやブルースの歴史を彩ってきた由緒あるブランドとして、今もなお多くのギタリストに愛され続けています。
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