はじめに
ギターの魅力は尽きることがありません。時代と共に進化を遂げながらも、伝統的なデザインと音色が愛され続けているギターブランドがあります。その代表格がギブソンです。本日は、ギブソンの人気モデル「ES-339」について詳しく解説していきます。このギターは、クラシックなES-335のエッセンスを継承しつつ、モダンなニーズにも応えるユニークなデザインが特徴です。歴史と革新が融合した「ES-339」の魅力に迫りましょう。
ES-339の誕生
ギブソンの名門セミアコースティックギター「ES-335」は、1958年に誕生して以来、ロック、ブルース、ジャズ、さまざまなジャンルの演奏家から高い支持を集めてきました。しかし、時代は移り変わり、ギタリストのニーズも多様化してきました。そこで登場したのが「ES-339」です。
ダウンサイジングの利点
ES-339は、ES-335のボディサイズを小さくしたダウンサイジングモデルです。これにより、従来のES-335に比べて軽量化が図られ、持ち運びやライブパフォーマンスでの扱いやすさが向上しました。さらに、ボディが小さいことで、プレイヤーの体格に合わせてフィット感を高めることができます。
一方で、ES-339はES-335のトーンと雰囲気を忠実に再現しています。つまり、ダウンサイジングによる利便性の向上と、伝統のES-335サウンドを両立させたのがES-339の大きな魅力なのです。
歴史に裏打ちされた品質
ES-339は、ギブソンの長年の歴史と伝統が裏付ける品質の高さを誇ります。ハンドロールドのマホガニーネックには、プレイヤビリティに優れた”C”シェイプが施されています。
ギブソンES-339の「ハンドロールドのマホガニーネック」という特徴は、その演奏性と快適さに大きく貢献しています。具体的には以下の点が挙げられます。
- マホガニー材の採用: ギブソンギターのネック材として広く使われているマホガニーは、豊かなサスティーンと暖かみのあるトーンが特徴です。セミアコであるES-339のサウンドに、ギブソンらしい粘り強さと響きを与えています。
- ハンドロールド(Hand-rolled)加工: これは、指板のエッジ(縁)が手作業で丁寧に丸められていることを指します。工場生産のギターでは、指板のエッジが直角に近いものも多く、長時間の演奏で指に当たって不快感を感じることもあります。しかし、ハンドロールド加工されたネックは、まるで長年弾き込まれたヴィンテージギターのように、手に吸い付くような滑らかな感触を提供します。これにより、非常に自然なフィンガリングが可能となり、演奏の快適性が格段に向上します。
- “C”シェイプのネックプロファイル: ES-339のネックは「Rounded “C”」シェイプと呼ばれる、比較的丸みを帯びたC字型のプロファイルを採用していることが多いです。これは、モダンな薄いネックとヴィンテージの太いネックの中間のような握り心地で、様々なスタイルのプレイヤーにフィットしやすいバランスの取れた形状です。ハンドロールド加工と相まって、より一層自然な握り心地を提供します。
これらの要素が組み合わさることで、ES-339のハンドロールドのマホガニーネックは、長時間の演奏でもストレスを感じにくく、ギタリストがより音楽に集中できるような快適な演奏体験を提供します。特に、レスポールなどソリッドギターからの持ち替えで、セミアコのサイズ感に慣れない方にとっても、ネックの快適さは大きなメリットとなります。
また、ローズウッド指板にはパーロイド・ドット・インレイが打たれ、クラシックなギブソンのデザインを継承しています。
さらに、ES-339には57クラシック/57クラシック・プラス・ハムバッキング・ピックアップが搭載されています。ハンドワイヤリングされたトーン・サーキットと組み合わされたこのピックアップは、ギブソンESギターの名門に値する音色を生み出します。
ES-339の特徴
ES-339は、ダウンサイジングされたボディと伝統的なギブソンの品質が融合した製品です。その特徴を、さらに詳しく見ていきましょう。
サイズとウェイト
ES-339のボディサイズは、従来のES-335よりも小さくなっています。具体的には、ボディ長が約2.5cm短く、幅が約2cm狭くなっています。この小ぶりなサイズは、ギタリストの体格に合わせて最適なフィット感を実現できるだけでなく、持ち運びの際の利便性も高めています。
また、ボディ肉厚も若干薄くなっているため、ES-339のウェイトは従来モデルよりも軽量化されています。この軽量化によって、ライブパフォーマンスでの疲労が軽減され、長時間の演奏にも対応できます。
ネックとハードウェア
ES-339のネックは、握りやすいハンドロールド加工が施された”C”シェイプを採用しています。このネックシェイプは、ギブソンの伝統的なプレイヤビリティを継承しつつ、現代的な使いやすさを実現しています。
また、ハードウェアも一新されています。チューブレス・トラスロッドとヴィンテージスタイルのGroverペグが採用されており、チューニングの安定性と操作性が向上しています。
音色の特徴
ES-339の音色は、ES-335の伝統を受け継ぎつつ、小型ボディならではの特性が加わっています。
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セミアコらしいウォームで豊かなサウンド:
- ボディ内部の空洞とセンターブロックの組み合わせにより、ソリッドギターにはない豊かな倍音と奥行きのあるサウンドが特徴です。特にクリーンサウンドでは、箱鳴り感からくる空気感と、マホガニーネック由来の暖かみのあるトーンが心地よく響きます。
- ES-335と比較すると、ボディサイズが小さい分、箱鳴り感はやや控えめになる傾向がありますが、その分タイトでレスポンスの良いサウンドが得られます。
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優れたサスティーン:
- センターブロックの存在が、ソリッドギターのような長いサスティーンを可能にしています。音の伸びが良く、特にブルースやジャズのソロなどで威力を発揮します。
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ハウリングへの強さ:
- フルアコースティックギターに比べてセンターブロックがあるため、大音量での演奏時でもハウリングが起こりにくく、歪ませたサウンドでも比較的安定しています。ES-335よりもさらに小型なため、よりハウリングに強いと感じるギタリストもいます。
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ピックアップによるキャラクター:
- 多くのモデルに搭載されている「57 Classic」や「バーストバッカー」といったピックアップは、ギブソンらしい太く粘りのあるハムバッカーサウンドが特徴です。
- フロントピックアップ: 甘くメロウなトーンで、ジャズやブルースのソロ、コードワークに最適です。
- リアピックアップ: パワフルでブライトなトーン。ロックやブルースのリフ、リードプレイに適しています。適度なエッジ感があり、音抜けが良いです。
- センターポジション: フロントとリアのミックスで、プリッとした独特のカッティングサウンドや、クリーミーなハーモニーが得られます。多くのギタリストがESシリーズの魅力として挙げるポイントです。
サウンドバリエーションと適応ジャンル
ES-339は、その汎用性の高さから、多種多様なジャンルに対応できるサウンドバリエーションを持っています。
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クリーンサウンド:
- 非常に明瞭でウォームなクリーンサウンドは、ジャズ、ブルース、フュージョン、R&Bなどで真価を発揮します。コードの響きが美しく、アルペジオも艶やかに聴こえます。
- 特にフロントピックアップの甘さと、センターポジションでの奥行きのあるサウンドは絶品です。
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クランチサウンド(軽い歪み):
- オーバードライブやクランチをかけると、セミアコらしい「枯れた」味わいのあるドライブサウンドが得られます。ピッキングニュアンスが豊かに表現され、ブルースロック、クラシックロック、カントリーロックなどに非常にマッチします。
- 倍音感が豊かで、コードが濁りにくく、粒立ちの良いクランチトーンが魅力です。
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ハイゲインサウンド(深い歪み):
- ソリッドギターほど極端なハイゲインには向きませんが、ロック系の深い歪みにも対応できます。ES-335よりハウリングに強いため、ES-339の方がより安心して歪ませられると感じるギタリストもいます。
- リードプレイでは、太く粘りのあるサスティーンと、中域にパンチのあるサウンドが得られ、ハードロックや一部のオルタナティブロックなどでも使用されます。
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エフェクターとの相性:
- ディレイやリバーブといった空間系エフェクターとの相性も抜群です。セミアコ特有の豊かな響きが、エフェクトと組み合わさることで、さらに深みのある幻想的なサウンドを生み出します。
- コンプレッサーやワウペダルなども、そのサウンドキャラクターと合わせて非常に効果的に使用できます。
ES-339は、そのコンパクトなボディサイズとセミアコ構造、そしてギブソンハムバッカーの組み合わせにより、クリーンからクランチ、さらにはハイゲインまで、ギタリストの表現力を最大限に引き出す、非常に懐の深いギターと言えます。 多くのジャンルで活躍できるため、「一本で何でもこなしたい」というギタリストや、「レスポールからセミアコに持ち替えたいけどサイズが…」というギタリストにとって、非常に魅力的な選択肢となります。
まとめ
ギブソンの「ES-339」は、クラシックなES-335のエッセンスを継承しながら、モダンなニーズにも応えるユニークなセミアコースティックギターです。ダウンサイジングされたボディによる軽量化と扱いやすさ、伝統的な品質と音色、そして豊富なサウンドバリエーションなど、ES-339の魅力は多岐にわたります。
ギターの進化を体現するES-339は、ギブソンの名門ぶりを改めて実感させてくれます。伝統と革新が融合したこのギターは、さまざまなジャンルのギタリストから支持されるでしょう。ギターの新たな可能性を求めるあなたに、ES-339をぜひおすすめします。
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