エフェクターの世界で「TS系」と呼ばれるオーバードライブペダルは、多くのギタリストにとって欠かせない存在です。その代表格であるTube Screamerの温かく芯のある音色は、ロックからブルースまで幅広いジャンルで愛され続けています。しかし、「もっと多彩な音作りができたら」「様々なシーンで使い分けられたら」と感じたことはありませんか?
そんなギタリストの願いを叶えるべく登場したのが、EarthQuaker Devices(EQD)の「Palisades」です。かつて「TS系は作らない」と公言していたEQDが満を持して開発したこのペダルは、従来のTS系の概念を大きく覆す革新的な機能を搭載しています。
6つのクリッピングモード、5つのバンド幅設定、2チャンネル構成により、なんと480通り以上の音作りが可能。一台で多彩なサウンドバリエーションを実現できるPalisadesは、まさに現代のギタリストが求める「究極のTS系ペダル」と言えるでしょう。
本記事では、このPalisadesの魅力を余すことなくお伝えします。基本的な特徴から実践的な使い方まで、詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みください。
1. Palisadesとは?EQDが本気で作ったTS系オーバードライブ
EarthQuaker Devices(EQD)が製作した「Palisades」は、オーバードライブペダルの中でも屈指の多機能を誇る製品です。このペダルは、往年の名機「Tube Screamer」をベースにしつつも、さまざまなモディフィケーションを加えた、現代のプレイヤーの要求に応えるために開発されました。
TS系ペダルの進化
EQDはかつて「TS系のペダルは作らない」と公言していましたが、数多くのファンからの要望を受けてついに開発を決意したのです。この「Palisades」は、単なる複製に留まらず、以下のような進化を遂げています。
- 6つのクリッピングモード: さまざまな音色を楽しむためのクリッピング切替スイッチが搭載されています。
- 5つのバンド幅モード: 音の太さやダイナミクスを調整できるため、幅広い音作りが可能です。
- 2チャンネル構成: ローゲインとハイゲインで、異なる歪みの表現に対応。
開発の背景
Palisadesの開発にあたっては、市場に存在する数多くのTS系ペダルやクローンモデル、さらにはヴィンテージのオリジナルTSペダルの音色を徹底的に比較検討されました。結果として、EQD流のアプローチで、世界で最も多機能かつ多彩な音色を生成するTS系オーバードライブとして完成したのです。
仕様と特長
Palisadesは、以下のように音作りに対する柔軟性を持っています。
クリッピングモード ボイス(Voice)ロータリースイッチ
- クリッピングバイパス
- LEDクリッピング
- MOSFETクリッピング
- 非対称シリコン・ダイオード・クリッピング
- 対称シリコン・ダイオード・クリッピング
- ショットキーダイオード・クリッピング
バンド幅モード バンド幅(Bandwidth)ロータリースイッチ
- 音のレスポンスやダイナミクスを5段階で調整でき、鋭いサウンドから太くコンプレッションの強い音まで選択可能です。
結果としてのサウンドバリエーション
このペダルは、さまざまな設定を組み合わせることで480通り以上の音作りを可能にします。これにより、演奏者は独自のサウンドを追求し、多岐にわたる音楽スタイルに対応した演奏ができるのです。Palisadesは、エフェクターの領域を超えた、まさに音楽制作の強力なパートナーとなるでしょう。
特に、EQDのブースト機能やノーマル/ブライトスイッチも加わることで、さらなるサウンドの厚みを追求することができます。このように、「Palisades」はギタリストだけでなく、様々な楽器やレコーディングの場面でも幅広く使用されることが期待される、真の万能ペダルと言えるでしょう。
2. 多彩な音作りを可能にする6つのクリッピングモード
EarthQuaker Devices Palisadesは、音作りにおいて真の多様性を求めるミュージシャンにとって、理想的なペダルです。その特筆すべき点は、6つの異なるクリッピングモードにあります。これにより、プレイヤーは多彩なサウンドを探索することが可能となります。
クリッピングモードの詳細
ボイス(Voice)ロータリースイッチ
- モード1:クリッピングバイパス – このモードでは、クリッピングを行わず、ペダルの原音を楽しむことができます。シンプルでクリーンな音色を求めるプレイヤーに最適です。
- モード2:LEDクリッピング – ややアタック感のある軽めの歪みが得られます。クリーンなトーンとオーバードライブの良いバランスを保ちながら、シングルコイルピックアップと特に相性が良いです。
- モード3:MOSFETクリッピング – 豊かなハーモニクスを伴う歪みを演出します。軽めのゲイン設定が可能で、滑らかなサウンドを獲得したいプレイヤーにうってつけです。
- モード4:非対称シリコンクリッピング – ヴィンテージのTS808に近いサウンドを再現。この音色はやや太さを増し、リードプレイに適したトーンになります。
- モード5:対称シリコンクリッピング – コンプレッションが強く、ディストーションに近い音色が特徴です。厚いサウンドを得たい場合は、このモードが頼りになります。
- モード6:ショットキーダイオードクリッピング – 軽いファジーな音色が特徴で、独特のキャラクターを持っています。これにより、他のペダルでは味わえない個性的なサウンドを得ることができます。
ユーザーへの提案
このように多彩なクリッピングモードが搭載されていることにより、Palisadesはあらゆる音楽ジャンルに適応可能です。例えば、以下のようなシチュエーションで使い分けると良いでしょう:
- ロックやメタル:モード5やモード6を使用して、強力でパンチのある音色を作り出すことができます。
- ジャズやブルース:モード1やモード2を選択することで、よりクリーンなサウンドを楽しむことができ、フレーズの表現力を増します。
これらのクリッピングモードをうまく活用することで、Palisadesから得られる音色の幅は無限大です。多様なサウンドを求めるプレイヤーには、ぜひ試していただきたいペダルです。
3. コントロール解説:各ノブの使い方と特徴
エフェクターの操作感はサウンドメイキングにおいて非常に重要です。EarthQuaker Devicesの「Palisades」は、多機能なノブとスイッチが特徴であり、一つ一つの設定が音色に大きな影響を与えます。ここでは、各ノブとスイッチの使い方とその特徴に焦点を当てて解説します。
Boostノブ
このノブは、ブーストスイッチON時のブースト量を調整します。設定次第で、クリーントーンのまま音量を上げたり、ドライブサウンドに厚みを加えることができます。特にギターソロの際に使用すると、サウンドにパワーを与えることができ、存在感を一層引き立てます。
Volumeノブ
音量レベルを調整するシンプルなノブですが、質の高い音色を得るためには非常に重要です。適切なボリューム設定によって、ギターのピッキングアタックやニュアンスを際立たせることができ、演奏のダイナミクスを豊かにします。
Toneノブ
音色を調整するこのノブは、右回りで明るいトーンになり、左回りでは暖かみのあるトーンを得ることができます。特に高域の抜けが気持ち良く、トーンを絞っても音がクリアに抜けるため、ジャンルを問わず幅広いスタイルに適応できます。音のキャラクターをカスタマイズしたいときにぜひ活用したいノブです。
Gain A / Gain B
「Palisades」には、低めのゲインにセッティングされたチャンネルAと、より高いゲイン設定のチャンネルBがあります。この二つのチャンネルによって、よりワイドレンジな音色とタイトな音色をシュミレート可能です。サウンドの質感や歪みの特性を瞬時に切り替えることができるため、ストロークやアルペジオによる表現が一層豊かになります。
トグルスイッチとロータリースイッチ
- Normal/Brightスイッチ: ノーマルモードでは暖かなトーンに、ブライトモードではチャイミーで鮮やかなトーンを実現します。ジャンルに応じて好みの音色を選択できるのが嬉しいポイントです。
- Bandwidthスイッチ: ゲインストラクチャを変更できる5モードのダイナミクス切替スイッチで、音色の鋭さや厚みを自在に操ることができます。演奏スタイルや楽曲ごとに適切な設定を選ぶ楽しさがあります。
- Voiceスイッチ: 6つのクリッピングモードで様々な音色を楽しむことができ、モードによって独自のキャラクターを持ったサウンドが得られます。クリッピングの変更により、ハーモニクスや音質が大きく変化するため、クリエイティブな表現が可能です。
これらのコントロールを駆使することで、「Palisades」の多彩な音作りが実現し、演奏者の個性や表現を引き出すことができるのです。音楽におけるサウンドデザインの幅が広がり、クリエイティブなサウンドメイキングを楽しむことができます。
4. Boostスイッチの活用法とサウンドメイキング
Palisadesの特徴的な機能のひとつに、Boostスイッチがあります。このスイッチは、ペダルのサウンドをより豊かにし、さまざまな音楽スタイルに対応するための強力なツールです。具体的にどのように活用できるかを見ていきましょう。
Boostスイッチの基本機能
Boostスイッチは、サウンドのボリュームを一時的に上げる役割を果たします。これにより、特にソロパートやアンサンブル内で目立たせたい時にピッタリです。Boostを使用する際のポイントを以下にまとめます。
- 手軽にサウンドに厚みを追加: Boostスイッチを活用することで、ライブ演奏やレコーディング時に瞬時に音量をアップできます。
- 音圧の調整: Boostを使うことで、特にディストーションやオーバードライブをかけた音に対して、さらにダイナミクスの強いサウンドを得ることが可能です。
具体的なサウンドメイキングのテクニック
Boostスイッチを使用する際は、次のテクニックを取り入れることで、より創造的な音作りができます。
- ダイナミクスの強調: フレーズの中で、特に強調したい部分やサブメロディにBoostを活用すると、より表現力豊かになります。
- クリッピングモードとの組み合わせ: 音色を選択する“Voice”や“Bandwidth”モードを切り替える際に、Boostを併用することで、それぞれのモードの個性を引き出します。たとえば、モード4で暖かいトーンを得た後にBoostをかけると、より豊かな倍音が得られ、音がまろやかになります。
- 音量調整の頼りに: ライブパフォーマンスでは、Boostスイッチを利用して音量をコントロールすることで、各曲に応じた音圧を一瞬で調整できます。
体験談:実際の使用例
多くのギタリストは、ライブ演奏の際に特定のソロやハーモニクスを強調するためにBoostを使っています。例えば、バンドの中で会場全体に響くメロディを奏でる場合、Boostを発動させることで、観客の注意を確実に引き寄せられます。
さらに、他のペダルやアンプとの相性も重要です。Palisadesは、様々な機材と組み合わせて使用することができ、その際のBoost機能は特に活きてきます。アンプの歪み具合や他のエフェクトとのバランスを考慮しつつ、Boostを駆使することで、想像以上のサウンドバリエーションを実現することが可能です。
このように、PalisadesのBoostスイッチは、音作りの幅を広げる強力なツールです。各設定や状況に応じて活用することで、独自のサウンドを追求してみてください。
5. 実践的な使用例:様々なアンプとの相性
アースクエイカー・デヴァイセズの「パリセーズ」は、その多機能性から幅広いアンプとの相性が良く、さまざまな音楽スタイルに対応可能です。ここでは、代表的なアンプと「パリセーズ」の組み合わせによる特徴的なサウンドを紹介します。
クリーンアンプとの相性
クリーンアンプに接続すると、「パリセーズ」はその効果を最大限に引き出します。特に以下のような効果が期待できます:
- ナチュラルなオーバードライブ: 軽いゲインで、クリーンな音から美しい暖かみのある歪みを生成します。
- トーンコントロールの効率: Toneノブの設定次第で、高域を強調したり、柔らかい音色に調整することが可能です。
バキバキのハイゲインアンプ
ハイゲインアンプに「パリセーズ」を接続すると、そのディストーションの太さをさらに引き立てることができます。
- 多彩なクリッピングモード: 特にモード4やモード5に設定すると、タイトな音色がハイゲインでもクリアに聞こえるため、バンド全体の中で埋もれにくくなります。
- サウンドのコントロール: Gain AとGain Bのチャンネルを切り替えることで、曲によって異なるサウンドを即座に得られます。
ヴィンテージアンプとの融合
ヴィンテージスタイルのアンプにおいても、「パリセーズ」はその持ち味を上手に引き出します。特に以下の点が印象的です:
- ビンテージTSサウンド: モード3やモード4を使用することで、オリジナルのTS808に近い音色を得ることが可能です。ヴィンテージファンにとっては試してみる価値があります。
- ダイナミクスを調整: Bandwidth機能を利用して、より柔らかいサウンドからアグレッシブなトーンまで自在に調整が可能です。
他のエフェクターとの組み合わせ
「パリセーズ」を他のエフェクターと組み合わせて使うと、さらなる音の幅を広げることができます。特におすすめのエフェクターは:
- ディレイやリバーブ: 「パリセーズ」のオーバードライブとエコー系エフェクターの相性は抜群で、深みと広がりのあるサウンドを実現できます。
- ファズペダル: ファズと組み合わせることで、さらに激しい音作りができ、独自の音色を作ることが可能です。
このように、「パリセーズ」はその多機能性を生かし、様々なアンプやエフェクターと組み合わせることで、無限のサウンドバリエーションを実現します。これにより、プレイヤーの個性を引き出し、演奏スタイルに合わせた音作りが楽しめるのです。
まとめ
EarthQuaker Devices「Palisades」は、オーバードライブペダルの領域を超えた究極のサウンドツールといえるでしょう。6つのクリッピングモード、5つのバンド幅調整、2チャンネル構成など、フレキシブルな設計により、無限に近い音色を生み出すことができます。また、Boostスイッチや他の機材との相性の良さから、演奏者の音楽性を最大限に引き出してくれます。プレイヤーの探究心を刺激し、クリエイティビティを育む「Palisades」は、まさにギタリストの必須アイテムと言えるでしょう。このペダルを手に入れることで、これまでにない新しい音楽表現の可能性が広がるはずです。現在EarthQuaker Devices Palisadesは既に生産終了しており、新品の入手は非常に難しい状況のようです。
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