はじめに
T-REX Effectsは、デンマーク発のエフェクターブランドとして高い評価を受けてきた老舗メーカーです。2019年に経営破綻という大きな転機を迎えながらも、その後ブランドは再編され、現在も多くのギタリストに支持され続けています。
数あるT-REX製品の中でもMudhoney IIは、発売から年月を経た現在でも根強い人気を誇るオーバードライブペダルです。荒々しくも音楽的な歪みキャラクターを持ち、一般的な定番ペダルとは一線を画す存在として、多くのプレイヤーの記憶に残っています。
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T-REX Effectsの歴史と背景
T-REX Effectsは北欧デンマークを拠点とし、高品質なアナログエフェクターの開発を得意としてきたメーカーです。派手なデザインや極端な多機能性よりも、音質・耐久性・実用性を重視した製品作りで知られており、プロ・アマを問わず評価を得てきました。
一方で、価格帯がやや高めであったことや流通規模の問題から、大手メーカーほどの認知度を得られなかった側面もあります。2019年の経営破綻はブランドにとって大きな出来事でしたが、その後の再編によりT-REXは再スタートを切り、現在も製品は継続して供給されています。
Mudhoney IIの開発コンセプト
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Mudhoney IIは、従来のディストーションペダルの枠に収まらないデュアル・オーバードライブ構造を採用し、実践的な音作りを追求して開発されました。本機は、全く同一仕様の歪み回路を2基搭載しており、左右それぞれのチャンネル(CH1 / CH2)に独立したセッティングを施すことが可能です。
各チャンネルにはGain、Level、Toneに加え、Normal / Boost切替スイッチが備えられており、クランチから強めの歪みまで幅広いレンジをカバーします。この構造により、例えば「CH1はBoostオフでクランチ用」「CH2はBoostオンでメインの歪み用」といったように、2つの完成した歪みサウンドを瞬時に切り替える運用が可能となっています。
開発チームは、ヴィンテージファズに通じる荒々しさと、オーバードライブとしての音楽的なまとまりを両立させることを目標としていました。その結果、単なるゲイン違いの2チャンネルではなく、プレイヤーの表現力を大きく広げる実戦的なデュアル・オーバードライブとして、Mudhoney IIならではの独特なサウンドキャラクターが完成しています。
市場での位置づけと評価
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Mudhoney IIは発売当時、中級〜上級者向けの高品質オーバードライブとして市場に投入されました。価格帯は決してエントリー向けではありませんでしたが、音質・作り・個性を重視するギタリストからは高い評価を得ていました。
特にプロやレコーディング志向のプレイヤーの間では、「定番とは違う歪みが欲しい」「既存のTS系やRAT系では物足りない」という層に支持され、スタジオ用途でも使用例が見られました。現在でも中古市場では安定した人気があり、知る人ぞ知る名機として評価されています。
技術仕様と機能解析
Mudhoney IIは、アナログ回路による歪み生成を核としたオーバードライブペダルです。操作系はシンプルながら、各コントロールの効きは非常に音楽的で、セッティング次第で幅広い表情を引き出すことができます。
回路構成とコントロール
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搭載されている主なコントロールは以下の通りです。
Gain
Level
Tone
各チャンネルにはNormal / Boost切替スイッチが備えられており、Boostをオンにすることでゲイン量と押し出し感が増す設計となっています。
Mudhoney IIは実質的に独立した2つのチャンネル構成を採用しており、それぞれに個別のセッティングを施すことが可能です。各チャンネルでBoostのオン/オフを切り替えられるため、単なる音量変化に留まらず、歪みの質感や押し出し感そのものが変化します。その結果、ライブ演奏中でも異なるキャラクターの歪みを瞬時に切り替えて使用することができます。
回路設計と音響特性
回路は完全アナログ構成で、荒々しさを残した歪み成分と、過度に潰れすぎないダイナミクスを両立しています。ノイズ対策も十分に施されており、実用ゲイン範囲では扱いやすいS/N特性を維持しています。
中域が前に出る周波数設計のため、バンドアンサンブル内でも埋もれにくく、ギターの存在感を自然に強調できる点が特徴です。
サウンドキャラクターの分析
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Mudhoney IIのサウンドは、その名の通り「泥臭さ」を感じさせる個性的な歪みが特徴です。ただし、単なる暴れたファズではなく、オーバードライブとしてのまとまりも備えています。
ロー〜ミッドゲイン領域
Gainを低めに設定した場合、軽くザラついたクランチ〜オーバードライブサウンドが得られます。ピッキングニュアンスへの反応も良好で、ブルースやガレージロック、オルタナティブ系のリズムプレイに適しています。
ミッドゲイン領域
Mudhoney IIの本領が発揮されるのがこのレンジです。コードを弾いた際の密度感と単音弾きでの存在感のバランスが良く、ラフでありながら音楽的な歪みが得られます。Boostを併用することで、ソロ時の音量・押し出し感を自然に強化できます。
ハイゲイン設定について
Gainを最大近くまで上げると歪み量は増しますが、いわゆるモダンメタル向けのタイトなハイゲインディストーションとは方向性が異なります。あくまで荒さを残したオーバードライブ/ファズ寄りの質感であり、Mudhoney IIの個性が最も強く表れるポイントです。
ピックアップとの相性
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シングルコイルではブライトでエッジの効いたサウンドが得られ、特にストラト系との相性は良好です。ハムバッカーでは中低域の厚みが増し、より重量感のある歪みになります。P-90との組み合わせでは、Mudhoney IIの中域特性が際立ち、独特の存在感を放ちます。
実践的な使用方法
ライブでは、Boostをソロ用に設定することで、踏み替え一つで音量とキャラクターを切り替えられる点が大きな利点です。レコーディングでは、アンプの歪みと組み合わせることで、単体使用とは異なる奥行きのある歪みを作ることも可能です。
比較分析とポジショニング
Mudhoney IIは、TS系やDS-1のような定番ペダルとは明確に異なる方向性を持っています。ProCo RATや、より個性派のブティック系オーバードライブと比較されることが多く、**「万人向けではないが刺さる人には強烈に刺さる」**タイプのペダルです。
まとめ
T-REX Mudhoney IIは、単なる多機能ペダルではなく、強い個性と音楽的な歪みを重視したオーバードライブとして高く評価されるべき一台です。
ブースト機能を備えた実戦的な設計、荒々しさを残したアナログサウンド、そしてバンドアンサンブルでの存在感は、現代の製品と比較しても色褪せることはありません。
中古市場で今なお支持され続けている事実こそが、このペダルの完成度を物語っています。Mudhoney IIは、歪みペダルの歴史の中で独自の立ち位置を確立した名作として、今後も語り継がれていく存在と言えるでしょう。





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