Klon Centaurはなぜ高い?伝説のエフェクターの魅力と価値を徹底解説

スポンサーリンク
エフェクター
Pocket

はじめに

ギター業界には、時間の経過とともに価格が大幅に上昇し、ミュージシャンの間で”伝説的な”存在となったエフェクターが存在します。その中でも、Klon Centaurは最も象徴的な事例と言えるでしょう。当初は6万円前後で販売されていたこのオーバードライブペダルが、現在では何十万円もの値がつけられるほど、その価格は高騰しています。この記事では、Klon Centaurの魅力と、その高価格となった理由について探っていきます。

                 

Klon Centaurの歴史と希少性

Klon Centaurは、1994年から2009年までの15年間にわたってビル・フィネガン氏によって一人で製造されていました。当初は年間数百台程度の生産でしたが、後に生産台数が減少していきました。そのため、現存する台数は8,000台程度とも言われており、その希少性が価格高騰の大きな要因となっています。

限られた生産期間と手作業による製造

Klon Centaurは、1990年代初頭にビル・フィネガン氏が4年半の歳月をかけて開発を重ね、遂に1994年に発売されました。その後、15年間にわたって自身の工房で一つ一つ手作業で製造されていました。製品の品質を保つためにこのような製造方式が取られていましたが、ペダル1台の製造に数時間を要するなど、大量生産は難しい状況でした。

希少性が高まるにつれ、新品の販売価格は段階的に値上がりしていきました。当初は239ドル(当時の為替レートで約2万6,000円程度)でしたが、最終的には329ドル(約3万6,000円)にまで上がっていきました。ビル・フィネガン氏による製造が終了した2009年以降は、新品の入手はほぼ不可能となり、中古市場でのみ取引されるようになりました。

       

トップアーティストの使用による名声

Klon Centaurの価格高騰に拍車をかけたのが、有名アーティストの使用による知名度の上昇です。クラプトン、ジョン・メイヤー、ノエル・ギャラガーらの著名ミュージシャンが実際に使用していたことから、Klon Centaurは多くのギタリストの憧れのペダルとなりました。特に、ブルース・スプリングスティーンのツアーでテックを務めたユタ州在住のギタリスト、マイク・ソリスが、ツアー中にメイヤーに使用を勧め、その後メイヤーのサウンドにKlon Centaurは欠かせない存在となったと言われています。

このように、偶然の出来事と有名アーティストの使用が重なったことで、Klon Centaurの名声は一気に高まりました。加えて、プレイヤー間の口コミで評判が広まり、入手を希望するミュージシャンが増えていったことも、価格高騰に拍車をかける要因となりました。

Klon Centaurの革新的な回路設計

Klon Centaurが高価格となった理由は、その希少性だけではありません。このエフェクターが革新的な回路設計を採用していたことも大きな魅力の一つです。従来のオーバードライブとは一線を画す音質により、多くのギタリストの支持を得ることができました。

ゲルマニウムダイオードによるユニークなサウンド

Klon Centaurが持つユニークなサウンドは、その回路設計に由来します。基本は真空管アンプのようなクリッピング波形を生み出すための単純な回路ですが、ゲルマニウムダイオードを使用することで、他のオーバードライブとは一線を画す独特のクリッピング特性を実現しています。ゲルマニウムは移動度が低いため、ダイオードから放出される電荷が遅れてクリッピングされることで、温かみのある歪み音が生まれるのです。

さらに、回路には専用のバッファが使用されており、ギターとアンプの間の干渉を最小限に抑えています。これにより、ブライトでクリアな高域と豊かな倍音を保ちつつ、アンプの個性を十分に引き出せるサウンドが実現されました。このようなユニークな特性により、チューブスクリーマーなどの従来のオーバードライブとは一線を画す音質が生み出されているのです。

2バンドEQによるサウンドコントロール

Klon Centaurには、トレブルとミッドの2バンドEQが搭載されています。通常のオーバードライブペダルにある単一のトーンコントロールとは異なり、このEQによって高域と中域をそれぞれコントロールできます。例えば、高域のみを上げてアタックを強化したり、逆に抑えてスムーズな歪み音を生み出したりと、幅広い音作りが可能になります。

また、ミッドレンジのEQによって、パワフルでタイトなサウンド、あるいはラフでゲインの高いサウンドを選択できるなど、用途に合わせた音作りも可能です。このように、2バンドEQの搭載により、Klon Centaurは単なるオーバードライブエフェクターを超えた、幅広いサウンドコントロールを実現するユニットとなっています。

特性の異なる個体による個体差

Klon Centaurに魅力を感じるギタリストが多いのは、その回路設計の革新性だけではありません。同じ製品でありながら個体によってサウンドの特性が微妙に異なるという興味深い点があります。これは、主にゲルマニウムダイオードの性質によるものです。ゲルマニウムは微量の不純物の偏りでその特性が大きく変わり、ダイオード1つ1つの性能が異なってしまうのです。

さらに、Klon Centaurは手作りによる製造であったため、部品の実装や配線の微妙な違いも個体差につながっていきました。このような理由から、同じKlon Centaurでも個性的な音色を持つ個体が存在し、それを求めてコレクターたちが入手を競う事態となりました。ギタリストによっては、特定の音色の個体のみを高値で手に入れようとするあまり、何十台ものKlon Centaurを買い漁ったともいわれています。

Klon Centaurへの追随とクローン製品の台頭

Klon Centaurの人気の高まりと共に、同様の音質を持つクローン製品も次々と登場するようになりました。確かにオリジナルに迫る音質を持つクローンもありますが、一方でKlon Centaur本体の魅力を損なうものでもあります。

オリジナルに迫る音質のクローン製品

Klon Centaurの人気が高まるにつれ、その回路を忠実に再現したクローン製品が数多く登場しました。J.Rockett Audio Designs社のArcherシリーズは、オリジナルと同一のゲルマニウムダイオードを使用するなど、細部にわたって本家の回路を再現しており、本物に極めて近い音質を実現しています。また、モリスバチャマンのアナログマンなどのアナログマン・シリーズも、オリジナルに匹敵するサウンドを持つクローン製品として高い評価を得ています。

このようなクローン製品の価格は、数万円程度と比較的リーズナブルです。しかし、音質においてはオリジナルKlon Centaurとの違いをほとんど感じられないほどの高い完成度を持っているのが特徴です。そのため、価格と音質のバランスからクローン製品を選ぶギタリストも多くいます。

クローン製品の問題点とオリジナルの価値

一方で、クローン製品には幾つかの問題点もあります。まず、オリジナルKlon Centaurの真髄である”個体差”を再現することは不可能です。クローン製品は量産品であるため、全て同一の特性を持つことになります。そのため、オリジナルの持つ個性的な一点物としての魅力は失われてしまいます。

また、オリジナルKlon Centaurの価値観を損なう側面もあります。オリジナル製品の製造者であるビル・フィネガン氏自身が、製品の無秩序な模倣に強く反対していたことからも分かるように、クローン製品の製造・販売には議論の余地があります。製品の希少性や価値が失われてしまう恐れがあるためです。

マルチエフェクターでのモデリング搭載

近年では、ラインセレクト社のHX Stomp、Helix LTなどのマルチエフェクターにもKlon Centaurのモデリングが搭載されるようになりました。DSP技術の進化により、オリジナル製品に極めて近いサウンドとレスポンスを再現することが可能になったのです。

Line 6 HX Stomp

Line 6 Helix LT   

製品名 概要 価格
Line 6 HX Stomp Klon Centaurモデリングを搭載したマルチエフェクター 約6万円
Line 6 Helix LT 同上 約11万円

これらのマルチエフェクターを使えば、わずか数万円の価格でKlon Centaurに迫る音質を手に入れられます。しかし一方で、本物のアナログ回路とはまた異なる特性を持つことは避けられません。そのため、本物のアナログサウンドを求める上級者にとっては、オリジナル製品かクローンペダルを選択する価値はあると言えるでしょう。

Klon Centaurの継承と発展

Klon Centaurに代表される”トランスペアレント系”のオーバードライブは、その後のエフェクター業界に多大な影響を与えました。同様のコンセプトを採用する製品が数多く生まれ、新たな進化を遂げてきたのです。

後継モデルの登場

Klon Centaurの製造が終了した後、ビル・フィネガン氏とジョン・ペロッティ氏は新たな後継モデル「KTR」を開発しました。KTRは、従来のゲルマニウムダイオードに加え、ゲルマニウムトランジスターも搭載するなど、新しい可能性を秘めた製品となりました。しかし、2012年のリリース後に一時的な生産中止があり、その後も製造中断が続く状況にあります。

また、ゲルマニウムダイオードを採用したKlon Centaurの仕様変更版として「Klon KTR」も発売されましたが、生産終了が発表されています。このように、原点であるKlon Centaurの製造は事実上終了していますが、その理念を受け継いだ製品は今も登場し続けているのです。

エフェクターメーカーによる追随

Klon Centaurに代表されるトランスペアレント系オーバードライブの人気を受け、その後、各エフェクターメーカーからも類似のコンセプトを採用した製品が数多く生まれました。Fulltone社のOCD、Wampler社のPlexidrive、J.Rockett Audio Designs社のTour Seriesなどがその代表例です。これらの製品は、艶やかな歪み音と倍音の豊かさでKlon Centaurの系譜を継承しつつ、さらなる進化を遂げています。

また、MI Audio社のCrunch Boxなどのようにエンハンサー回路を組み込んだ製品なども登場しています。Klon Centaurがギターアンプのクリーントーンを活かす製品として使われていたのと同様に、ペダルの音色をエンハンス可能な製品も生まれたのです。トランスペアレント系オーバードライブの理念は、エフェクター界に大きな影響を与え続けているのがうかがえます。

高価格な製品を望む理由

Klon Centaurは非常に高価な製品でありながらも、多くのギタリストから支持され続けています。この事実から見えてくるのは、ギタリストにとって価格以上に重要な何かがあるということです。

単なるエフェクターを超えた存在価値

Klon Centaurは単なるオーバードライブではありません。この製品は、回路設計における革新性や卓越した技術力の象徴でもあり、さらにはエフェクター業界の節目となる存在でした。ギタリストにとってKlon Centaurを所有することは、音作りの可能性を広げると共に、歴史に残る製品との縁を感じられるのかもしれません。

また、この製品の価値は音質だけに留まりません。個体差から生まれる一点物としての魅力や、有名アーティストとの関係性なども、Klon Centaurの価値を高める要因となっています。単に音が良いだけでなく、プレミア感にあふれた付加価値までもが、ギタリストを虜にするのかもしれません。

真のトーンへの探究心

確かに、クローンやモデリングなど、Klon Centaurに近いサウンドを手に入れる選択肢は増えてきました。しかしながら、本物のアナログサウンドに非の打ち所はありません。デジタルサウンドでは決して再現できない、細部にまでこだわった特性があるのです。

そのため、音作りのプロフェッショナルとして、より本物に近いサウンドを追求したいと考えるギタリストが多く存在するのも事実です。時にはコストを気にすることなく、命運を賭けて本物との出会いを求める、そんなギタリストの姿もあるのかもしれません。価格は高額でも、真のトーンへの探究心さえあれば、Klon Centaurを手に入れる意義は十分にあるのではないでしょうか。

まとめ

この記事では、Klon Centaurが非常に高価格になった理由について探ってきました。希少性や著名アーティストの使用、革新的な回路設計などの理由がありますが、単にその点だけでは高価格は正当化できません。重要なのは、この製品がエフェクター業界に与えた大きな影響と、ギタリストの心を捉えた魅力にあると言えるでしょう。

Klon Centaurへの追随やクローン製品の登場により、類似のサウンドは手に入れやすくなりました。しかし一方で、本物にしかできない特性や価値観もあります。そのようなものを求めてKlon Centaurを手に入れるか、コストを抑えてクローンに落ち着くかは、各ギタリストの価値観次第と言えるでしょう。

いずれにしろ、何十万円もする高価なエフェクターにも存在価値はあります。Klon Centaurは、単なる音の良し悪しを超えた、ギタリストの深い探究心に応える特別な製品なのです。

Pocket

コメント

タイトルとURLをコピーしました