はじめに
アコースティックギターの世界には、数多くの名器が存在しますが、特にフォークやブルースのシーンで欠かせないのがGibson J-45とJ-50。
これらのギターは、その豊かなサウンドとシンプルなデザインで、多くの伝説的アーティストたちに愛されてきました。
本記事では、この2本のギターの歴史や特徴、そしてフォーク・ブルース界の名プレイヤーたちについて深掘りしていきます。
J-45 J-50
Gibson J-45 戦時中に誕生した“ワークホース”
ギブソン J-45は、1942年に誕生したアコースティックギターです。第二次世界大戦中という時代背景もあり、質実剛健な「ワークホース(頼れる馬車馬)」として、多くのミュージシャンに愛されてきました。
J-45の主な特徴
- ラウンドショルダーのボディシェイプ(丸みを帯びた肩のデザイン)
- スプルーストップ&マホガニーバック&サイドの組み合わせ
- ダークなサンバーストフィニッシュが定番(黒い縁取りから赤茶色へのグラデーション)
- 豊かな中低音と甘いサスティンが魅力
Gibson J-50:J-45の兄弟モデル
J-50は、1947年に登場したJ-45のナチュラルフィニッシュバージョン。
戦時中は物資の制限でJ-45のサンバースト仕上げが標準でしたが、戦後になって「ナチュラルフィニッシュ」を求める声が増えたため、J-50が誕生しました。
J-50の主な特徴
- 基本構造はJ-45と同じ(スプルーストップ&マホガニーボディ)
- ナチュラルフィニッシュ(明るい木目が際立つデザイン)
- J-45に比べると、やや明るくクリアな音色
J-45 & J-50 フォーク・ブルースの名器たち
サザナー ジャンボ (Southerner Jumbo) 〔後にサザン・ジャンボとモデル名変更]。 その後継機種で1960年代に作られたカントリー・ウェスタン (Country Western)。 サンバースト・フィニッシュのJ-45 と、 姉妹モデルのナチュラル トップ J-50。これらのギブソン 「ラウンド・ショルダー」 フラットトップ・シリーズは、1960年代のフォーク・シーンで熱烈な支持を集めていた。
またブルース界でも人気が高く、ライトニン・ホプキンス、ミシシッピ・ジョン・ハート、 レヴァランド・ロバート・ウィルキンスといった名だたるミュージシャンが愛用している。 実際、 1950年代から60年代にかけて、アコースティック・ブルース・プレイヤーなら誰もが一度はギブソン・フラットトップを手にしたようだ。
第2次大戦中に深刻な木材不足が続いた影響で、J-45 の初期モデルには、 裏板/ 側板にマホガニー材ではなくメイプル材を使ったものが見られる。 しかし戦後、 J-45とJ-50 の仕様に大きな変更はなかった。
1955年前後に、デカールを変えたり、黒いセンターシームを付けたり、奇妙なデザインのアジャスタブル・ブリッジに変更したり、 ブレイシングのタイプを変えたりといった、 マイナー・チェンジが実施されたのみである。 心にしみ入るような甘く温かい音を響かせるギブソン・ラウンド・ショルダーは、今も昔と変わらず愛されている。 例えば、 ブルースマンのジョン・キャンベルは、ディアルモンドピックアップを付けた1952年製サザン・ジャンボを愛用。 ラップ スタイルのスライド・プレイヤー、 ケリー・ジョー・フェルプスの愛器は、1945年製のJ-45である(なおフェルプスは2005年のインタヴューで 「1947年製のJ-45 がいちばんのお気に入り」と述べている)。
J-45 & J-50がフォーク・ブルースに愛された理由
① 温かみのあるマホガニーサウンド
スプルーストップとマホガニーバック&サイドの組み合わせは、フォークやブルースにぴったりの温かみと甘さを持っています。
コードをかき鳴らすと、バランスの良い中低音が心地よく響きます。
② 弾き語りに最適な音のまとまり
ドレッドノートほど音が派手に広がらず、しっかりまとまったサウンドになるため、弾き語りにも最適。
歌の邪魔をせず、それでいて存在感のある音が特徴です。
③ シンプルで飽きのこないデザイン
J-45のサンバースト、J-50のナチュラル仕上げは、それぞれシンプルながらも存在感があり、長く使うほど味が出ます。
長年弾き込まれたJ-45/J-50のヴィンテージモデルは、まさに渋いフォーク・ブルースの象徴といえるでしょう。
J-50 ブルース
一つのギターが、全くスタイルを異にする二人のプレイヤーに愛された。 1912年テキサス州センターヴィルに生まれたライトニン・ホプキンス。 戦前を代表するテキサス・ブルースの巨人、 ブラインド・レモン・ジェファスンに直接師事し、 共演する幸運に恵まれる。
ヒューストンのストリート・ミュージシャンを経て、1940年代後半にロサンゼルスのアラジン・レーベルと契約。〈ショットガン・ブ(Shotgun Blues)> <Tモデル・ブルース (‘T’ Model Blues)〉 〈ギヴ・ミー・セントラル 209 (Give Me Central 209) > などのヒットを放つ。 1950年代半ばまでには人気は衰えるが、1959年にエレクトリック・ギターをアコースティックに持ち替えてフォーク・ブルースに転向。 形式にとらわれないスタイルと感情が込められた音楽が人々の心をとらえ、1960年代に人気を回復した (1982年没)。
ジョン・ジャクスンもギブソン・アコースティックを愛したプレイヤーだ。 ヴァージニア州ウッドヴィル生まれ。1940年代には故郷周辺のハウス・パーティーなどで演奏し、ラグタイム風のピードモント・ブルース・スタイルを完成させていった。 20年近い沈黙の後、フォーク・リヴァイヴァルの波に乗って再び聴衆の前に姿を現す。ジャクスンが選んだのは、温かみのある低音を響かせるスリム・ネックのナチュラルトップJ-50。間もなく、しみじみとした曲を演奏するソングスターとして人気を集める。彼のフィンガーピッキング・スタイルは、ウィリー・ウォーカー、 ブラインド・ブレイク、ブラインド・ボーイ・フラーといった巨匠にも匹敵すると称賛された (2002年没)。
J-45 と J-50 の変遷
1942年 J-45 発表。 16インチ (約 40.6cm) 幅のマホガニー・ボディー、 ダーク・サンバーストのスプルース・トップ スケール長 24 3/4インチ (約 62.9cm)。 マホガニー・ネック、ローズウッド材の指板、 ポジション・マークはパールのドット。 2パール・ドットの付いたダウン・ベリー・ブリッジ、 「ファイアーストライプ」のピックガード。
1943-44年 「戦時対応」 としてメイプル材を裏板/ 側板に使ったモデルがある。 一部は表板がマホガニー材。 トラスロッドがないタイプも作られた。 長方形のレクタンギュラー・ブリッジ。
1946年 ブリッジの形状が、 長方形から凸部分が下向きのダウン・ベリー・ブリッジに変更。 ナチュラル・トップのJ-50 発表。
1949年 凸部分が上向きのアッパーベリー・ブリッジに変更。
1950年 表板にトリプルバインディング導入。
1955年 長いスキャロップトブレイシングから短いノンスキャロップト・タイプに変更。 ピックガードが、 ティアドロップ形から1点がとがったデザインに変更。
1956年 アジャスタブルブリッジを搭載したオプション・モデル導入 (J-45ADJ J-50ADJ)。
1962年 ブリッジにパールのドットなし。 J-45 のスタンダード仕様がチェリーサンバースト・フィニッシュになる。
1968年 ブラックまたはチェリーのフィニッシュ導入。「Gibson」 のロゴが入ったねじ止め式ピックガードのモデルもある。
1969年 ボディー・シェイプがラウンドショルダーからスクエアショルダーに変更。 J-45 および J-50、 1982年に生産終了。 J-45 は84年に再発売、 以来生産が続いている。ヴィンテージモデルの復刻版や、ローズウッド指板のモデルなど、さまざまなヴァージョンがある。
J-45 J-50
どっちを選ぶ?J-45 vs. J-50
J-45 | J-50 | |
---|---|---|
見る | サンバースト仕上げ | ナチュラルフィニッシュ |
音の特徴 | やや暗くて暖かい | 明るくクリア |
ジャンル | フォーク、ブルース、ロック | フォーク、カントリー、ブルース |
愛用アーティスト | ボブ・ディラン、ジョン・レノン | ポール・サイモン、ライトニン・ホプキンス |
基本的には好みで選べばOK!
J-45とJ-50の主な違い
- フィニッシュ:
- J-45: サンバースト・フィニッシュ
- J-50: ナチュラル・フィニッシュ
- サウンド:
- 基本的なサウンドは同じですが、フィニッシュの違いにより、J-50の方が若干明るく、クリアなサウンドと言われることがあります。
- 個体差や年代によってもサウンドは異なります。
- 希少性:
- J-50はJ-45に比べて生産数が少ないため、中古市場では希少価値が高い場合があります。
どちらを選ぶかのポイント
- 見た目の好み:
- サンバーストの渋い雰囲気が好きならJ-45、木材の質感を活かしたナチュラルな雰囲気が好きならJ-50。
- サウンドの好み:
- 可能であれば、実際に試奏してサウンドを比較してみるのがおすすめです。
- 予算:
- 中古市場では、J-50の方が高価になる傾向があります。
- 希少性:
- J-50は生産数が少ない為、希少性を求める方にはおすすめです。
どちらを選んでも、ギブソンの素晴らしいサウンドと演奏性を楽しめます。
- J-45とJ-50は、基本的な仕様が同じ兄弟モデルです。
- どちらも、多くのプロミュージシャンに愛用されています。
- どちらも素晴らしいギターですので、最終的にはあなたの好みで選んでみてください。
J-45 J-50
5. まとめ
ギブソンのJ-45とJ-50は、フォーク・ブルースの世界で長年愛され続けてきた名器です。 J-45の懐かしいサンバーストの音色、J-50のクリアで抜けの良い音色は、それぞれに魅力があります。
とりあえず選んでも、フォークやブルースを愛するなら間違いないのギター。
これからJ-45やJ-50を手に入れる人も、すでに持っている人も、ぜひそのサウンドを楽しんでください!
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