はじめに
ギターの音を決めるもっとも重要な要素の一つが、ピックアップです。適切なピックアップを選ぶことで、ギターに理想的な音色を吹き込むことができます。本日は、ギター愛好家の間で高い評価を得ているセイモアダンカンのピックアップについて、その特徴を探っていきましょう。
ヴィンテージからモダンまで幅広いラインナップ
セイモアダンカンは、1950年代から60年代のヴィンテージサウンドから、現代のロックに欠かせないモダンサウンドまで、様々なジャンルに対応するピックアップを展開しています。
象徴的な「JB Model」
セイモアダンカンを代表するのが、PAFをベースにした細めの巻き線を持つハムバッカー「JB Model(SH-4)」です。ブランドイメージを決定づけた重要なモデルで、ロックからメタルなど激しいジャンルに最適です。
JBモデルは、豊かな音色と高出力を特徴とし、ギタリストから高い評価を受けています。ブリッジ用のTB-4ピックアップも、トーンの広がりと解像度の高さが魅力です。
ヴィンテージ・レプリカ「Antiquity」シリーズ
セイモアダンカンは、ヴィンテージサウンドを再現する「Antiquity」シリーズや「Antiquity Ⅱ」シリーズも展開しています。これらのシリーズは、深みのあるクリーン、クランチ、ドライブサウンドが特徴的です。
特に「Antiquity」シリーズは、50年代後半から60年代にかけてのピックアップサウンドを忠実に再現しており、ヴィンテージ愛好家から高い支持を受けています。
多様なバリエーションとカスタマイズ性
セイモアダンカンのピックアップは、ストラト用シングルコイルからハムバッカーまで、ヴィンテージ系からハイパワー化、ノイズレス化、アクティブ化など、多様なラインナップを展開しています。
また、カスタムショップでは、ピックアップのコイル配線やマグネットの種類など、好みに合わせてカスタマイズすることも可能です。ギタリストのニーズに合わせた最適化設計が行われているのが特徴です。
ピックアップの性能を決める要素
セイモアダンカンのピックアップは、直流抵抗やレゾナントピーク、マグネットの種類など、さまざまな要素が音質に影響を与えています。
直流抵抗とレゾナントピーク
レゾナントピーク(共振ピーク)とは、特定の周波数帯域において、電気回路や音響システムなどが最も効率的に振動する現象のことです。ギターのピックアップにおいては、そのピックアップ固有の強調される周波数帯域を指します。
ピックアップにおけるレゾナントピーク
- ピックアップは、弦の振動を電気信号に変換する装置ですが、その構造上、特定の周波数帯域で信号が増幅される現象が起こります。これがレゾナントピークです。
- レゾナントピークの周波数は、ピックアップのコイルの巻き数、使用されている磁石の種類、その他の構造的要因によって決まります。
- レゾナントピークの高さと周波数は、ピックアップの音色に大きく影響を与えます。
- レゾナントピークが高いほど、高音域が強調され、明るく歯切れの良いサウンドになります。
- レゾナントピークが低いほど、中音域が強調され、太く温かみのあるサウンドになります。
レゾナントピークと音色の関係
- シングルコイルピックアップ:一般的に、高音域にレゾナントピークがあり、クリアでブライトなサウンドが特徴です。
- ハムバッカーピックアップ:一般的に、中音域にレゾナントピークがあり、太くパワフルなサウンドが特徴です。
レゾナントピークを調整する方法
- ピックアップの交換:異なるレゾナントピークを持つピックアップに交換することで、音色を大きく変えることができます。
- コンデンサの変更:ピックアップの配線にコンデンサを追加することで、レゾナントピークの周波数を調整することができます。
- ピックアップブースター等のエフェクターを使用する。
レゾナントピークを理解することで、自分の理想とする音色に近づけるためのピックアップ選びや音作りが可能になります。
直流抵抗が高いほど出力が大きくなりますが、高音域が低下します。一方、レゾナントピークが高ければ、ピックアップの音質は歯切れのよい明るいものになります。
例えば、SSL-2は6.6kΩの直流抵抗と9.0kHzのレゾナントピークを持ち、よりブライトなトーンを生み出します。SSL-3は16.4kΩの直流抵抗と4.4kHzのレゾナントピークを持ち、よりフラットなトーンを生み出します。
SSL-2SSL-3
マグネットの種類による音質の違い
アルニコ2は低出力ながらウォームで中域の増した音質、アルニコ5は高出力でブライトかつ艶やかな音質を持ちます。セラミックは磁界がパワフルで、ブライトかつレンジの広い音を生み出します。
マグネットの種類を変えることで、ギターの木材に合わせてピックアップの音質を調整できるのがセイモアダンカンの魅力の一つです。
出力やノイズキャンセリングの調整
セイモアダンカンのハムバッカーピックアップは、2つのコイルを直列に配線することで出力を大幅に上げ、ノイズをキャンセルしたパワフルなサウンドが特徴です。
また、コイルの配線を工夫することで、出力の異なるフラットなサウンドやシングルコイルのサウンドも得られるなど、サウンドメイクの幅が広がります。
ジャンルに合わせた音色のチョイス
セイモアダンカンのピックアップは、ジャズからロック、メタルまで、さまざまなジャンルに対応できる音色を持っています。
ジャズのための「Jazz」モデル
SH-2 Jazzモデルは、ジャズミュージシャンのために作られたピックアップです。59モデルよりも出力が抑えられており、ブライトで明瞭なサウンドが特徴です。
また、シングルサイズのハムバッキングピックアップSJBJ-1b JB Jrは、デフォルトのシングルコイルピックアップを搭載しているギターにも取り付けやすいです。
レスポールサウンドのためのピックアップ組み合わせ
SH-1 59モデルとSH-4 JBモデルの組み合わせは、トラディショナルなレスポールサウンドにおすすめで、リッチなサウンドを出力します。
59モデルは中高域にピークを持ち、しっかりとしたアタック感とピッキングに対する粘り気を感じさせます。JBモデルは攻撃的な中域が特徴で、ヘヴィミュージックに最適です。
ダウンチューニングに適した「Invader」モデル
インベーダーモデルは低域が豊かで引き締まりのある重厚なサウンドを生み出し、ダウンチューニングに最適です。
カスタムモデルは歌うような太く丸い高音とバターのような低音を持ち、様々なジャンルで活用できます。
プロフェッショナルからの高い支持
セイモアダンカンのピックアップは、高い音質と柔軟な使い勝手から、プロアマを問わず多くのギタリストに支持されています。
ロックミュージシャンに人気の「JB」モデル
SH-4 JBモデルは、ロックやメタルなどのミュージシャンに人気の高いハムバッカーです。80年代のロゴなしタイプも存在し、GAINを3段階で調整できます。
FRTモデルやFenderギターに使用されることで、豊かな倍音と良好なサウンドを実現します。また、レイルデザインにより広範囲の周波数特性を持つのも魅力です。
創業者のルーツと高い技術力
セイモアダンカン社の創業者セイモア・ダンカン氏は、アメリカ人ギタリストでした。イギリスでも多くの有名アーティストの顧客を持っていたことから、高い技術力が伺えます。
また、ギブソン仕様のテレキャスター「テレギブ」の開発にも携わるなど、革新性にも富んでいました。
リペアマンからの信頼も厚い
セイモアダンカンのピックアップは、整理された美しいトーンが特徴的で、高級ブランドのモデルにも搭載されることが多くあります。
リペアマンからも高い信頼を集めており、プロフェッショナルからの支持が強いのが特徴です。
まとめ
本日は、セイモアダンカンのピックアップについて、その特徴を探ってきました。ヴィンテージからモダンまで幅広いラインナップ、さまざまな要素が影響する音質の調整、ジャンルに合わせた音色のチョイス、プロフェッショナルからの高い支持など、多くの魅力があることがわかりました。
ギタリストにとって、ピックアップは音の出発点です。セイモアダンカンのピックアップは、ギタリストの可能性を大きく広げてくれる存在なのです。皆さんもギターの音作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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