はじめに
ギター・エフェクター界に revolution とも言えるほどの大きな影響を与えた伝説のペダル「Klon Centaur」。その後継機種として登場した「KTR(Klon Transferred Redesign)」は、オリジナル・ケンタウルスと比べると製造コストが抑えられた分お求めやすい価格設定となりました。そしてさらに、KTRをOEM生産(他社のブランド名で製品を製造すること)していたJ. Rockett Audio Designs社から、KTRをベースに開発された新しいペダル「The Jeff Archer」が発売されました。本日は、このジェフ・アーチャーの魅力を存分に紹介しつつ、ギター・トーンの追求に役立つ様々な観点からレビューしていきたいと思います。
ブランド&製品概要
まずはジェフ・アーチャーを生み出したブランドと、製品の全体像について簡単に振り返っておきましょう。
J. Rockett Audio Designs
ジェフ・アーチャーを製造しているJ. Rockett Audio Designsは、テネシー州に拠点を構えるエフェクター・メーカーです。
長年セッション・ミュージシャンとして活動し、数々のレコーディング現場で培った経験を活かし、Chris Van Tassel(クリス・ヴァン・タッセル)とJay Rockett(ジェイ・ロケット)が、自分たちの求める理想の米国製ギター・エフェクトのブランド「ジェイ・ロケット・オーディオ・デザインズ」を立ち上げました。2006年より本格的な生産を開始し、多くのセッション・ギタリストに愛用され、現在では全米中で非常に人気のあるブランドとなっています。
プレイヤーの視点に立ってエフェクターを開発することを理念に掲げています。
Klon Centaurの製造終了後、同社はKTRのOEM生産を請け負うなど、ケンタウルス系ペダルの分野で著名なブランドに成長しました。
代表作には「Archer」シリーズをはじめ、「The Dude」や「ANIMAL」といったオーバードライブ・ペダルがあり、それぞれファンの支持を受けています。中でも本日の主役「The Jeff Archer」は、ケンタウルスとKTRの長所を生かしつつ、さらに新しい可能性を追求した逸品だと評されています。
製品概要
ジェフ・アーチャーのルーツは、前述のKTRにあります。しかし単なるKTRの再現品ではなく、新たな価値を付与された1台なのです。外観は控えめなシルバーボディですが、音の魅力は絶大なものがあります。
主な仕様 | 特徴 |
---|---|
3つのコントロールノブ | アウトプット、トレブル、ゲイン |
トゥルー・バイパス方式 | ペダルをオフにしても信号劣化がない |
内部昇圧回路 | 18Vで駆動し、よりアンプライクなサウンド |
他にも日本限定の「Jeff Archer」モデルが話題を呼んでいますが、詳細は後ほど述べさせていただきます。
サウンド・レビュー
いよいよジェフ・アーチャーのサウンドについて詳しく見ていきましょう。その実力は単なるケンタウルスのクローンどころではなく、新次元のオーバードライブ・サウンドを実現していると高い評価を得ています。
クリーン・ブースト
ジェフ・アーチャーのゲイン・コントロールを最小に設定すれば、クリーンなサウンドを活かしながら全体を上手く持ち上げてくれます。上位機種のアーチャー・アイコンとは異なり、ギター・トーンをあまり喧しくすることなく、控えめで自然な音作りが可能です。特にハムバッキング・ピックアップとの相性はバツグンで、弦の響きやニュアンス、指の動きなどを忠実に再現してくれます。
また、このクリーンブースターの使い勝手はアンプやエフェクターといった他の機材との組み合わせによって大きく変わります。例えばクリーン・アンプに接続してゲインを上げれば、リード・トーンの太さと艶を実現できます。逆にディストーションの上位にペダルを挟めば、音の透明度が増し、鋭利さが加わってメタル向けの歪みが生まれます。まさにコンプレッサーの役割を果たしてくれる便利な機能と言えるでしょう。
オーバードライブ
ゲイン・レンジを上げていけば、ジェフ・アーチャーはよりパンチのきいたオーバードライブ・サウンドを生み出してくれます。トレブル・コントロールを調整することで、歪みのキャラクターを様々に変化させられるのが大きな魅力です。特にトレブルを少なめにすると、クリーム・テイストの太いリードが得られます。逆に強めのハイトレブルを選べば、切れの良いダイナミック・サウンドになります。
音質はいずれも上品で奥行きがあり、アンプ・ゲインとの相乗効果が期待できます。チューブアンプやブースター系の歪み系エフェクターとの相性が抜群で、ジェフ・アーチャーのオーバードライブ・サウンドは理想的な仕上がりになります。特にブリッジ側のハムバッキングとジェフ・アーチャーを組み合わせて音作りをするのがおすすめです。
ハイゲイン・ブースター
ゲインを最大に構えた場合、ジェフ・アーチャーはまるでアンプの耐力を無限に引き上げたかのような、ハイゲイン・ブースター的な機能を発揮します。これほどまでに鮮明な倍音とハーモニクスをサステインし続けてくれるエフェクターは滅多にありません。ちょっと無理なハイ・トーンも、このペダルを介在させるだけで、柔らかく絶妙なニュアンスが生まれます。
ハイゲイン・アンプやディストーションを組み合わせることで、ジェフ・アーチャーの本当の力がわかるはずです。親和性のある歪み系エフェクターとリンクさせれば、タイトなボトムとシャープなハイエンド、中域のメリハリといった、見事なバランスのトーン生成に成功するでしょう。また、ソロ・パートで活用すれば、エレガントでファットなリードが生まれ、メロディを際立たせることができます。
特別モデル「Jeff Archer」
続いては、ジェフ・アーチャーの日本限定モデル「Jeff Archer」についてご紹介します。国内のギタリストからの高い人気を受けて誕生したこの特別仕様は、既に入手困難な希少品となっています。
外観と仕様
「Jeff Archer」の外観は、ブラック・マット仕上げの筐体とホワイトのLEDが特徴的です。こうした抑制のあるデザインながら、音の魔力は並み居るものではありません。実際、KLON・ケンタウルスのような極上のトーンを再現できるとの高い評価を受けています。
基本的な仕様はジェフ・アーチャーと同様ですが、以下のような小さな違いもあります。
- OUTPUT、TREBLE、GAINの3つのノブ配置が左から時計回りになっている
- デュアル・ゲインチャンネル設計により、クリーン~オーバードライブまでシームレスな変化
- LEDの色がホワイトに変更され、より見やすく演出効果も上がっている
このように、「Jeff Archer」は本家のジェフ・アーチャーの良さはそのままに、さらに使い勝手の良さや見た目の魅力も加えられています。
音の特徴
さて、そんな「Jeff Archer」の音の魅力はどのようなものでしょうか。まず目を引くのは、ケンタウルス・ペダルを意識したような立ち昇る倍音の豊かさです。クリーンからゲインを上げていくと、より太く力強いリードが出現し、奥行きのある艶めいた歪みが感じられます。このようなサウンドは、ブルースやロック、メタルなど幅広いジャンルで活躍してくれるはずです。
一方でケンタウルスらしい繊細さも併せ持っており、Archer ikonに比べると若干控えめな印象を受けます。しかし代わりに、アグレッシブな歪みではなく、味わい深い太いリード・サウンドが得られるのは魅力の一つです。ギター・トーンをありのままに引き立ててくれるのが「Jeff Archer」の醍醐味だといえるでしょう。
使い方と活用シーン
ジェフ・アーチャーの実力を存分に引き出すための使い方や活用シーンについて見ていきましょう。汎用性の高さが魅力の一つで、様々なギター・スタイルに適応できます。
セッティング例
まずはセッティング例をいくつか掲げますが、これらはあくまでも目安です。オリジナルのサウンドを見つけるためには、ギターやアンプ、他のエフェクターとの組み合わせを試しながら、自分なりのベスト・セッティングを見出してください。
- クリーン・ブースト: OUTPUT 12時、TREBLE 10時、GAIN 9時
- ジューシー・オーバードライブ: OUTPUT 3時、TREBLE 11時、GAIN 12時
- ハイゲイン・ブースト: OUTPUT 3時、TREBLE 1時、GAIN 5時
ライブ/リハーサル
ジェフ・アーチャーは持ち運びが非常に簡単です。筐体はコンパクトかつ堅牢で、ギタリストによっては常設ペダルボードの一角に設置するのがおすすめです。アウトプット・レベル次第でプリアンプとしても活用でき、アンプ代わりに使えるのが便利な点です。
ライブやリハーサルでは、ギタリストとベーシストとの音作りの調和が重要となります。ジェフ・アーチャーを使えば、ギターのボリュームを上げすぎることなく、カッティングしすぎずにバックライン・サウンドを実現できます。攻撃的なリフやリードはもちろん、アーチャーの音作りの幅広さが発揮されるところです。
レコーディング
レコーディング時こそ、ジェフ・アーチャーの本領発揮の場と言えるでしょう。スタジオという厳しい環境でこそ、サウンドの美しさや奥行きの違いが際立ちます。ジェフ・アーチャーを駆使すれば、ギターにナチュラルなサステインをもたらしつつ、倍音の豊かさを損なうことなく仕上げられます。
特に、マイクロフォンの距離やポジション、さらには映像の印象まで考慮に入れたり、エフェクターやアンプの組み合わせを入念にセッティングできるレコーディングの現場では、ジェフ・アーチャーの可能性を無限に広げられるのです。ダイナミック・レンジの広さと絶妙なサスティーンがフィードバックループに絡むなど、思わぬ相乗効果も楽しめるかもしれません。
J. Rockett Audio Designs アーチャーとジェフ・アーチャーの違い
J. Rockett Audio Designs(ジェイ・ロケット・オーディオデザインズ)からリリースされているオーバードライブペダル「Archer」と「Jeff Archer」は、どちらも人気の高いモデルですが、いくつかの違いがあります。
1. 基礎となる回路
- Archer: J. Rockett Audio Designsが独自に開発した回路設計に基づいています。
- Jeff Archer: アーチャーの回路をベースに、世界的にも有名なロック・ギタリスト、ジェフベックの好みに合わせて、特に歪みの特性を強化したモデルです。
2. サウンド特性
- Archer: クリーンブースターとしても使用できるほど透明感のあるクリーンサウンドから、オーバードライブ、ディストーションまで幅広いサウンドメイクが可能です。
- Jeff Archer: アーチャーよりも歪みが強く、よりロックなサウンドに特化しています。特に、高域の倍音成分が豊かで、サスティーンも長いため、リードギターに最適です。
3. パーツ
- Archer: 高品質なパーツを使用しており、耐久性とサウンドの安定性が高いです。
- Jeff Archer: アーチャーをベースに、一部のパーツを変更することで、より個性的なサウンドを実現しています。
4. 外観
- Archer: シンプルでスタイリッシュなデザインが特徴です。
- Jeff Archer: アーチャーと基本的なデザインは同じですが、一部のカラーやロゴなどが異なる場合があります。
Archer Jeff Archer
まとめ表
特徴 | Archer | Jeff Archer |
---|---|---|
回路 | 独自開発 | アーチャーベースにモディファイ |
サウンド | クリーン~オーバードライブ | 歪みが強く、リードギターに最適 |
パーツ | 高品質パーツ | 一部パーツ変更 |
外観 | シンプル | アーチャーと類似 |
どちらを選ぶべきか?
- 幅広いサウンドを求める場合: Archer
- よりロックなサウンドを求める場合: Jeff Archer
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、ジェフ・アーチャーというケンタウルス系エフェクターの魅力を余すところなく紹介させていただきました。KTRをベースにしながら、オリジナリティを追求し続けた同ブランドの情熱と、アーチャー・シリーズの実力が現れた一台だと言えます。クリーンから激しいハイゲインまで、ギター・トーンを理想通りに仕上げてくれるはずです。
また、日本限定の「Jeff Archer」は、本家の良さを留めつつ新たな魅力を加えており、国内のギタリストからその存在価値を高く評価されている逸品です。レコーディングでもライブでも、さまざまなシーンでそのサウンドの素晴らしさを実感できるはずです。
エフェクターにかけた思い入れと理念は、サウンドを通してしっかりと伝わってきます。ジェフ・アーチャーは、まさにケンタウルスの系譜を継承しながら、新しい可能性を切り開いた1台なのです。みなさまにも、この魅力を存分にご堪能いただければと思います。
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