はじめに
SGギターは、Gibson(ギブソン)が1961年に発売したエレキギターのモデルで、ロックやハードロックを中心に多くのギタリストに愛用されています。SGは非常に軽く、またネックが最先端近くでボディーにジョイントされていた。このためハイ・フレットへのアクセスが大幅に改善され、ソロ・プレイの可能性が広がりました。
1961年にレスポールの後継機種として登場し、当時は「Les Paul SG」として販売されていましたが、後にレス・ポール本人がデザインを好まなかったため、単に「SG(Solid Guitar)」という名前になりました。
こうしてギブソンSGは 1960年代、ブルース・ロックのギタリストたちに歓喜の声をもって迎えられたのである。
悪魔の角を持つギター。軽量でパワフルなギブソン SGスペシャルは、1960年代に最高のブルース・ギターとされた。
50年代にはクールでシャープなサウンドが求められたが、60年代には激しいソロ・プレイが流行したためだ。
SGギターの主な特徴
1. 形状
- ダブルカッタウェイ: 左右対称のボディ形状は、ハイポジションでの演奏性を高めます。
- 薄いボディ: 軽量で取り回しが良く、長時間の演奏でも疲れにくいです。
2. サウンド
- マホガニーボディ: 暖かく、中音域に特徴のあるサウンドを生み出します。
- ハムバッカーピックアップ: パワフルで歪みやすく、ロックサウンドに適しています。
3. その他
- ネック: 細めで握りやすく、スムーズなフィンガリングをサポートします。
- セットネック: ボディとネックが一体化しており、豊かなサスティーンが得られます。
SGギターのメリット
- 演奏性: 薄いボディとダブルカッタウェイにより、高い演奏性を誇ります。
- サウンド: マホガニーボディとハムバッカーピックアップにより、ロックサウンドに最適なパワフルなサウンドが得られます。
- 軽量性: 軽量で持ち運びやすく、長時間の演奏でも疲れにくいです。
SGギターのデメリット
- ヘッド落ち: 軽量なボディのため、ヘッド側が重く、バランスが崩れることがあります。
- サウンド: 中音域に偏ったサウンドのため、ジャンルによっては音作りが難しい場合があります。
SGのブルース・ロックにおける利点
- パワフルなP.A.F.(またはP-90)ピックアップ
- ブルース・ロックでは、クリーンからクランチ、ディストーションまで幅広いトーンが求められるが、SGのハムバッカー(特にPAF系)は、それに対応できる豊かなミッドレンジと温かみのあるサウンドを提供する。
- 初期のSGにはP-90ピックアップが搭載されていたモデルもあり、これがまたファットで荒々しいブルース・トーンを生み出した。
- 薄く軽いボディとハイポジションの弾きやすさ
- SGはレスポールより軽量で、ネックジョイントが深いため、ハイポジションでの演奏がしやすい。
- これにより、ブルース・ロックの特徴であるソウルフルなベンディングや速いフィンガリングがスムーズに行える。
- 攻撃的でダークなトーン
- SGのサウンドは、フェンダー系のシングルコイルに比べて太く、マーシャルなどのアンプと組み合わせることで、ブルース・ロック特有の分厚い歪みを生み出す。
- 低音が強調されすぎず、中域が前に出るので、バンドアンサンブルの中でも抜けるサウンドを作りやすい。
スタンダード、スペシャル、ジュニア
SG スタンダード
シリーズ最上位SGカスタムに次くモデル。チェリー・フィニッシュ、フルサイズのハムパッキング・ビックアップ2型。1961年初期に発表。1963年末まで、トラスロッド・カバーに「レスポール」のロゴ、横方向に動くデラックス・ヴィブラート(ギブソン開発品の中ではあまり評価されていない)。コレクターの間では、1965年以前のモデルがもっとも人気が高い。1966年、ピックガードが大型化。1971年、SG デラックス(SG Deluxe)と交代する形で生産終了。
SG スペシャル
SGスタンダードの下位機種。
P-90ピックアップ2基、フィニッシュはチェリーまたはホワイト。SGスタンダードと同様のヴィブラート/ピックガードの変更を経て、1971年生産終了。後継機種はSG プロ(SG Pro)。ハードウェアに変更を加えて1970年代に再発売。
SG ジュニア
シリーズ中もっとも安価な機種。仕様は簡素だがスタイリッシュなデザイン。
チェリー・フィニッシュ、P-90ピックアップ1基。
1963年後半のカタログより SGジュニア(SGJr)にモデル名変更。ホワイト・フィニッシュのSG TVも発売されたが、1968年に生産終了。
3年後、SG ジュニア生産終了。
小型だが音がよく響く SGジュニア。
手ごろな価格でヴィンテージ・ロック/ブルースのサウンドを味わえる。
SG愛用ギタリストたち
フランク・ザッパ
ジョニー”ギター”ワトスンに多大な影響を受けたというフランク・ザッパは、SG スペシャルの愛用者だった。ザッパは、1960年代初頭のSG スペシャルを改造して使用していました。このギターは「Roxy」と呼ばれ、彼のキャリアにおいて重要な役割を果たしました。SG スペシャルは、ザッパの音楽に欠かせないサウンドを生み出す上で、重要な要素の一つでした。
カルロス・サンタナ
カルロス・サンタナは、ギブソンL6S、ヤマハ、ボール・リード・スミスを手にする前に、SG スペシャルでサン・フランシスコを制覇した。1960年代後半から1970年代初頭にかけて、サンタナはSG スペシャルをメインギターとして使用していました。特に、ウッドストック・フェスティバルでの演奏や、初期のアルバム「Santana」などで、彼のSG スペシャルのサウンドを聴くことができます。サンタナが使用していたSG スペシャルは、P-90ピックアップを搭載しており、独特の粘り気のあるサウンドが特徴です。彼のプレイと相まって、ブルースロックやラテンロックの要素を取り入れた、情熱的なサウンドを生み出していました。SG スペシャルは、サンタナの音楽キャリアにおいて、重要な役割を果たしたギターと言えるでしょう。
ミック・テイラー
ローリング・ストーンズのミック・テイラーは、1950年代末製オリジナル・レスポールが盗まれた後、ギブソンES-335とSG スペシャルをメイン・ギターにしている。ミック・テイラーは、ローリング・ストーンズに在籍していた時期にSG スペシャルを愛用していました。特に、1969年のハイドパークコンサートや、1970年のアルバム「Get Yer Ya-Ya’s Out!」のレコーディングで使用していたことが知られています。ミック・テイラーのSG スペシャルは、P-90ピックアップを搭載しており、彼のブルージーでメロディアスなプレイスタイルに合ったサウンドを生み出していました。ローリング・ストーンズ脱退後も、ミック・テイラーは自身のバンドやセッションワークでSG スペシャルを使用し続けました。
オリー・ハルソール
オリー・ハルソールは、1970年代から1980年代にかけて活躍したイギリスのギタリストで、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズや、自身のバンドであるパトゥ(Patto)などでプレイしました。彼のホワイト・フィニッシュのSGカスタムは、白いボディにゴールドパーツという特徴的なルックスで、ハルソールのサウンドを語る上で欠かせない存在でした。
ロビー・クリーガー
かつてはフラメンコ・ギターを弾いていたドアーズのギタリスト、ロビー・クリーガーのお気に入りもSGだ。クリーガーが使用していたSGは、1960年代のSGスペシャルで、マエストロ・ビブラート・テールピースが搭載されているのが特徴です。彼のSGは、ドアーズのサウンドを語る上で欠かせない存在であり、「Light My Fire」や「Riders on the Storm」など、数々の名曲で使用されました。
ピート・タウンゼント
ザ・フーのピート・タウンゼントが使用したSGは、主に1960年代後半から1970年代前半にかけてのもので、SGスペシャルやSGカスタムなど、複数のモデルを使い分けていました。特に有名なのは、1968年から1972年頃に使用したSGスペシャルで、P-90ピックアップを2基搭載し、独特のサウンドを生み出していました。また、1969年のウッドストック・フェスティバルでたたき壊したのも SG。タウンゼントは後に「SGは“バルサ材みたいに”軽いから、当てるところを狙えばいつでも一発で壊すことができた」と回想している(バルサ材は軽くて丈夫なことから救命具や浮きに用いられる)。そのパフォーマンスは観客を熱狂させました。
アンガス・ヤング(AC/DC)
AC/DCはハードロック寄りだが、ブルース・ロックの影響が非常に強い。SGを使った彼のスタイルは、ブルースのフレージングを基盤としたリードプレイが特徴的。
トニー・アイオミ(Black Sabbath)
彼のSGサウンドはヘヴィメタルの始まりとも言われるが、ブルース由来のリフやフィーリングが根底にある。特に初期のサバスの楽曲(例:「N.I.B.」)には、ブルース・ロックの影響が色濃く残っている。
デレク・トラックス(Derek Trucks)
オールマン・ブラザーズ・バンドの後継として、スライドギターを多用するモダン・ブルース・ロックギタリスト。SGを使用し、クリーントーンでも豊かな表現力を発揮している。
エリック・クラプトン(Eric Clapton)
クリーム時代に有名な「The Fool」と呼ばれるサイケデリック・ペイントのSGを使用。「Sunshine of Your Love」などでSG+マーシャルの分厚いクランチ・サウンドを鳴らしている。
クラプトンのサイケデリック SG
サイケデリックな模様がペイントされたギター、通称「フールSG」。あまりにも有名なこのSGは、クリームに所属していたエリック・クラブトンが1960年代に手にしたものだ。シリアル・ナンバーが確認できないため推測するしかないが、おそらく 1961年製のSG/レスポール。ペイントは、オランダ出身のデザイナー・グループ「ザ・フール(The Fool)」のサイモン・ポスチューマとマリーク・クーゲルが施した。
ザ・フールは他にも、ジョン・レノンのロールス・ロイス、クリームのジャック・ブルースのフェンダー・ベース、ビートルズがロンドンに開いたアップル・ブティックの壁画などを手がけている。このフールSGは間もな<ジョージ・ハリスンに譲られ、さらにアップル所属のミュージシャン、ジャッキー・ロマックスの手に渡った。
数年後ロマックスは、500ドル借りる担保として、このSG をギタリスト/プロデューサーのトッド・ラングレンに譲る。
現在はラングレンがフールSG の所有者である。最後に確認されたときには、グローヴァー・チューナー、1970年代製のシャーラー(Schaller)・ブリッジが搭載されていた。ヘッドには多くの裂があったが、ペイントは無傷だったという。この聖なるギターは、今もどこかで音楽を奏でているのだろう。 音楽ライターのスティーヴン・ローゼンは2008年4月、フールSGに関する記事をギプソン公式サイトに投着している。それによれば、フールSGは1964年製SG スタンダード。ラングレンは2000年にフールSGをサザビーズのオークションに出品。ある人物が15万ドルで落札したが、数年後に推定50万ドルで売却したとされている。
コメント