チューン・オーマチック・ブリッジを徹底解説!ギブソンサウンドの秘密と調整のコツ

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はじめに

ギブソン社のエレキギターが奏でる、あの骨太で甘く、そして伸びやかなサウンド。そのサウンドキャラクターを形作る重要な要素の一つに、「チューン・オーマチック・ブリッジ(Tune-o-matic Bridge、通称:TOM)」の存在があります。

今回は、このチューン・オーマチック・ブリッジが持つ特徴から、なぜギブソンサウンドに欠かせないのか、そしてギタリストなら知っておきたい調整のコツまで、徹底的に解説していきます。

チューン・オーマチック・ブリッジって何? その基本的な特徴と歴史

チューン・オーマチック・ブリッジは、1950年代にギブソン社によって開発された、エレキギター用のブリッジシステムです。レスポールをはじめとする多くのギブソンギターに採用され、その後のギターデザインにも大きな影響を与えました。

レスポール・カスタムには新たに、 革新的な“チューン・オーマチック”ブリッジが搭載された。

セミアコ・モデルに比て段違いにクリアな音がするソリッドボディでは、イントネーションのずれが如実に現れてしまうという難点があった。 イントネーション補正済みの木製ブリッジや、 新しいコンビネーション・ブリッジ・テイルピースは、かなり太い弦を張っていた当時のギターにはたいていフィットしたが、 ことこの高級モデルに関してはより精緻なチューニングが求められました。

チューン・オー・マチック・ブリッジはたちまち全ギタリスト必携の発明品となり、 今日でも高い人気を誇っています。

開発

チューン・オー・マチックはそもそも、 テッド・マッカーティーとエンジニアたちが明確な方向性の下に考案したパーツであり、最初のレスポールが完成する頃には開発が始まっていたようである。 「あれは私の発明品だ」 と、 テッドは言う。 「パテントも取得したよ」テッドの特許は1952年7月に出願され、 1956年4月にようやく認可された。 細かいイントネーション調整が可能なこの新型ブリッジは、 その後10年以上も、 ギブソン社の高級エレキギターの標準スペックであり続ける。 また、単体パーツとしても人気が高かった。 1956年のカタログにはこう書かれている。
「イントネーションにつきまとう困難を完璧に取り除いた、 ギブソン社の独創的な“チューン・オー・マチック”ブリッジ」

主な特徴は以下の通りです。

  1. 各弦のイントネーション(オクターブ)調整が可能 ブリッジ上の各弦が乗る「サドル」を個別に前後に動かすことができます。これにより、開放弦の音と12フレットのハーモニクス音、そして実音が正確に一致するように調整することが可能になり、どのポジションを弾いても正確な音程を保つことができます。これは、和音の響きを美しく保つ上で非常に重要です。

  2. ブリッジ全体の弦高調整 ブリッジ本体の両端に位置する2本の「スタッド(支柱)」を上下させることで、ブリッジ全体の高さを調整します。これにより、弦高(弦とフレットの距離)を簡単に調整できます。ただし、各弦ごとの弦高調整はできません。

  3. シンプルで堅牢な構造 ブリッジと、弦をボディに固定する「ストップテールピース」(またはボディ裏通し)という、シンプルな2ピース構造が基本です。このシンプルな構造が、弦の振動を効率的かつダイレクトにボディに伝えることを可能にし、豊かなサステインと太いサウンドを生み出します。

  4. 安定したチューニング 各サドルが金属製で、弦がスムーズに滑るため、チューニングの安定性にも貢献します。

どのゲージの弦を使おうとも6弦すべてを楽々とチューニングできる上、チューニングが最後まで狂わない」。
この新しいブリッジには、それぞれが独立して動かせる金属製サドルが採り入れられており、 弦ごとの正確なイントネーション調整を可能にしていた。 各サドルは可動範囲を稼ぐために斜めにカットされ、 水平方向に6つのネジ穴が設けられている。この穴に配されるスクリューを締めたり緩めたりすることで、弦のテンションを保ちながら手軽にイントネーションを調整できる仕組みだ。 指板のカーブに合わせて、各ブリッジ・ピースの高さも鋳造段階から補正された。 以前のブリッジと同様、両端のサムナットのホイールを回すことでブリッジの高低を変えられる。

ゴールドめっきのチューン・オー・マチックはパーツカタログ上ではABR-2と呼ばれ、 ゴールドトップにマウントされたような後発のニッケルバージョンはABR-1と呼ばれる。いずれも真鍮の鋳物であり、 機械で切削され、ネジ穴が切られている。 型番は違っても、両方とも底面にはABR-1 と記されていた。

なぜチューン・オーマチック・ブリッジが「ギブソンサウンド」の秘密なのか?

チューン・オーマチック・ブリッジがギブソンサウンドを特徴づける理由は、その構造が生み出す「弦振動の伝達効率」にあります。

  • 弦の振動をロスなくボディに伝達: 金属製のブリッジがボディにしっかりと固定され、弦の振動が直接ボディに伝わります。これにより、ボディ材が持つ鳴りやトーン特性が最大限に引き出され、ギブソン特有の豊かな倍音と長いサステインが生まれるのです。特に、レスポールのようなマホガニーボディにメイプルトップという組み合わせでは、このブリッジの特性が存分に発揮されます。

  • 適度なテンション感: ストップテールピースとブリッジの間の弦の角度(テンション)も、サウンドに影響を与えます。この適切なテンションが、弦の振動効率を高め、芯のあるサウンドと心地よい弾き心地に繋がっています。

チューン・オーマチック・ブリッジの調整のコツ

せっかくのチューン・オーマチック・ブリッジも、正しく調整されていなければそのポテンシャルを最大限に引き出すことはできません。基本的な調整のコツを押さえておきましょう。

1. 弦高調整(アクション調整) 演奏のしやすさに直結する重要な調整です。

  • 手順: ブリッジ両端のスタッドを、付属のマイナスドライバーや専用工具で回して上下させます。
  • ポイント: 弦高は低すぎるとバズ(ビビリ)が発生しやすくなり、高すぎると押弦しにくくなります。ご自身のプレイスタイルや好みに合わせて調整しましょう。一般的には、低フレット側から高フレット側にかけてわずかに高くなるように調整すると弾きやすいことが多いです。

2. イントネーション調整(オクターブ調整) 正確な音程を得るために必須の調整です。

  • 手順:
    1. まず、正確なチューニングを行います。
    2. 各弦の開放弦を弾き、チューナーで確認します。
    3. 次に、同じ弦の12フレットのハーモニクス音と実音を弾き、チューナーで確認します。
    4. 開放弦と12フレットの音がずれている場合、サドルを調整します。
      • 12フレットの音がシャープ(高い)場合:サドルをボディエンド側(後方)に動かします。
      • 12フレットの音がフラット(低い)場合:サドルをネック側(前方)に動かします。
    5. サドル調整は、サドルを固定しているネジをプラスドライバーで回して行います。
    6. 調整後は必ずチューニングし直し、再度確認を繰り返して正確な音程になるまで微調整します。
  • ポイント: 根気のいる作業ですが、この調整を怠ると和音が濁ったり、ソロを弾いた際に音痴に聞こえたりするので、しっかりと行いましょう。新しい弦に交換した際や、季節の変わり目には再確認することをおすすめします。

3. ストップテールピースの高さ調整(オプション) ストップテールピースが独立している場合、その高さも調整できます。

  • 手順: テールピース両端のスタッドを上下させます。
  • ポイント: テールピースを低くすると、弦とブリッジの間の角度が鋭角になり、弦のテンション感が増し、サステインが向上すると言われています。ただし、あまり低くしすぎると弦がブリッジの「リップ」(弦が通る部分の端)に接触してしまい、弦切れの原因になることもあるので注意が必要です。逆に高くするとテンション感が緩くなり、軽いタッチで弾けるようになります。ご自身の好みの弾き心地やサウンドに合わせて試してみましょう。

トップラッピング

弦を緩めずにアジャストできるブリッジはこれが最初だった。 当時のブリッジは、 弦を緩めてイントネーションを調節するタイプが多かった。 ある意味、当てずっぽうで。
だが、このブリッジなら弦を張ったまま調整が可能だった」セッティングを完璧にするため、この新型ブリッジはストップ/スタッド・テイルピースと併用された。 弦を括り付けるテイルピースは通常、チューン・オー・マチック・ブリッジの1.57インチ(約4センチ) 後方に配された。 今日では意外に感じられるが、元々は弦がテイルピースの上を通る仕様になっていた。カタログにもそう記載され、 実際にそのスペックで出荷されてもいる。 ブリッジ付近に手を置いたときにしっくりく
るのは、実はこのオリジナルの弦の通し方のほうである。 弦の振動がボディに最大限伝わるよう、テイルピースは2本のスタッドでボディ深くまで締め込まれているため、ギターの全体のサウンドを理想的に向上させ、 また、 鋭角なサドルの上で弦が簡単に切れることを防いでいる。さらに、ストップバーに弦を巻き付ける方法だと、 弦の張力が両端のスタッドにかからずに、ボディに対して違ったふうにかかってくる (それがまたゴールドトップの大きな音を生む)。 オリジナルのやり方で弦を通
したほうが、ボディはより共振し、より響きのいいトーンを得ることができるのだ。中には、ボディの裏側から弦を通すようにアレンジするプレイヤーもいる。 リング・ワッシャーを何個も使い、スタッドをきつく締め込んで、ボディの鳴りをよりダイレクトに得ようと試みているわけだ。

「トップラッピング」とは、主にチューン・オーマチック・ブリッジとストップテールピースの組み合わせを持つギターにおいて、弦をテールピースに通常とは異なる方法で張るテクニックのことです。

通常の弦の張り方では、弦はテールピースの穴に裏側から通され、その後テールピースの上を通ってブリッジのサドルへ向かいます。この場合、弦はテールピースの穴を通る際に鋭い角度(ブレイクアングル)で曲がります。

それに対して「トップラッピング」は、以下の手順で弦を張ります。

  1. 弦をテールピースの表側(ピックアップ側)から通す。
  2. テールピースの上を回して、ブリッジのサドルへ向かう。

これにより、弦がテールピースに当たる角度が緩やかになります。

トップラッピングのメリット(期待される効果)

ギタリストがトップラッピングを行う主な理由は、以下のような音質や演奏感の変化を期待してのことです。

  1. 弦のテンション感の緩和: 弦のテールピース上でのブレイクアングルが緩やかになるため、弦の張りがわずかに柔らかく感じられます。これにより、チョーキングやヴィブラートがしやすくなる、という感覚を持つプレイヤーが多いです。特に、太いゲージの弦を使う場合や、手の力が弱いギタリストにとっては、メリットと感じられます。

  2. サステインの向上(諸説あり): テールピースをボディに密着させることで、弦振動がテールピースからボディへより効率的に伝わりやすくなり、サステインが向上するという意見があります。ただし、これについては意見が分かれる部分でもあります。

  3. ブリッジやテールピースへの負担軽減: サドルやテールピースの穴への過度な弦の圧力が軽減されるため、特にヴィンテージギターのパーツなど、脆弱なものへの負担を減らす効果があるとも言われています。

  4. 弦切れの軽減(特定の状況下で): サドル上での弦の折れ角が緩やかになることで、サドルでの弦の摩擦やストレスが減り、弦切れが起こりにくくなるという意見もあります。

トップラッピングのデメリット・注意点

  • 弦の長さ: 弦をテールピースの上から回す分、通常の張り方よりも弦の長さが必要になります。新しい弦に交換する際に試すのが良いでしょう。
  • 見た目の変化: 好みによりますが、弦の張り方が通常と異なるため、見た目に変化が生じます。
  • 効果の感じ方には個人差がある: 音質や演奏感の変化は、ギターの個体差、使用する弦のゲージ、アンプやエフェクター、そして何よりもギタリスト個人の感覚に大きく左右されます。必ずしも全ての人にとって明確なメリットとなるわけではありません。

ジミー・ペイジやビリー・ギボンズなど、トップラッピングを実践している有名なギタリストがいることで知られており、特定のサウンドや演奏感を追求する上で試されることの多いテクニックです。

まとめ

チューン・オーマチック・ブリッジは、そのシンプルな構造の中に、ギブソンサウンドの魅力を最大限に引き出すための重要な要素が詰まっています。各弦のイントネーション調整や弦高調整を適切に行うことで、あなたのギターはさらに素晴らしい鳴りを得るはずです。

もし、ご自身のギターのサウンドや演奏性に不満がある場合は、ぜひ一度チューン・オーマチック・ブリッジの調整を見直してみてください。きっと、新たな発見があるはずです!

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