はじめに
ギブソン・ファイヤーバード(Gibson Firebird)は、1963年に登場したギブソンのエレキギターで、独特なデザインとサウンドが特徴です。その斬新なデザインとサウンドは、多くのギタリストを魅了し、ロックの歴史に名を刻んできました。この記事では、ファイヤーバードの歴史、特徴、魅力、選び方などを詳しく解説します。
ギブソン・ファイヤーバードの歴史
ギブソン・ファイヤーバードは、1963年に登場しました。当時、ギブソンはフェンダーのストラトキャスターやジャガーといった斬新なデザインのギターに対抗するモデルを求めていました。
発売当初のモデルは「リバース・ボディ」と呼ばれ、ネックが突き出すような独特のフォルムでした。しかし、1965年にはよりシンプルな「ノンリバース」モデルへと変更されました。
その後も、ファイヤーバードは多くのロックギタリストたちに愛用され、現在もギブソンのラインナップに残る個性的なギターとして高い人気を誇っています。
独創的なボディデザイン
フライングVの売り上げは伸びなかったが、ギブソン社長テッド・マッカーティーはくじけませんでした。さらに一歩進んだデザインを打ち出すべく、デトロイトの自動車デザイナー、レイ・デートリッヒに協力を仰ぎます。デートリッヒが描き上げたデザインは、従来のルールをすべて覆すものでした。ファイヤーバードのデザインは、高音側のホーン(角)が体側のホーンよりかなり長く、左右のくびれがずれた革新的なものでした(プレイヤーがギターを構えたとき、ボディーのくびれが体に沿って上下重なるよう左右非対称にしたデザイン)。
フェンダーから特許侵害のクレーム
この「オフセット」デザインに対し、フェンダーから特許侵害のクレームが付きます。またシングル・サイドのヘッドも、フェンダー・ギターとの類似が明らかだった為。
フェンダーは1959年、ジャズマスターの同様のデザインを特許登録しています。
独自の意匠
しかし独自の意匠もいくつか見られます。ファイヤーバードは、通常のギブソンギターとは違い、リバース・ヘッドストック(ヘッドが逆向き)を採用。ヘッドが反転したためチューナーが高音側(下側)にまわり、手が届きにくくなる。そこで、バンジョー・スタイルのクルーソン・チューナー(ギア比1:12)を採用。チューナーのつまみがヘッド裏側から突き出ているため操作が楽になり、外見的にも非常にすっきりした。湾曲した大型ビックガードの先端にセレクター・スイッチを搭載。ポットとジャック・ソケットはギブソン SG と同様の配置。
フィニッシュ、カラー
フィニッシュはブラウンとブラックのサンバーストが基本だったが、間もなくペルハム・ブルー、カーディナル・レッド、ケリー・グリーン、ゴールデン・ミスト、シルヴァー・ミスト、ポラリス・ホワイトなどの鮮やかなカスタム・カラーが導入される。こうしてファイアーバードは、ギブソン史上もっとも先進的なデザインのギターとなりました。
ファイアーバードのサウンド
ネックスルー構造によるサステインの長さ
通常のギブソンギター(レスポールやSG)はセットネックが採用されていますが、ファイヤーバードはオール・マホガニー材のスルーネック構造。
ネックスルーとは?
ネックとボディが一体成型されている構造で、ジョイント部分の段差がなく、振動の伝達がスムーズになるためサステイン(音の伸び)が長くなります。
これにより、ファイヤーバードは力強く伸びのあるサウンドを生み出します。
ミニハムバッカーによる独特なサウンド
ファイヤーバードに採用されたのは、ギブソン製ミニ・ハムバッキング・ピックアップ。カバープレートに覆われたノンアジャスタブル・タイプで、外見的にはエピフォンのミニ・ハムバッカーとよく似ているが、内部構造は大きく異なる。エピフォンのミニ・ハムバッカーは、2本のコイルの下に1本の棒磁石を設置。一方ファイヤーバードのミニ・ハムバッカーは、2本のコイルの中心にそれぞれ1本の棒破行が通っており、裏側には軟鋼板が取り付けられている。
ミニハムバッカーの特徴
- ハムバッカー特有のノイズレス性能を持ちながら、よりシャープでクリアな音
- P-90とハムバッカーの中間的なサウンド
- 中音域が豊かで、ロックやブルースに最適
ミニハムバッカーならではのエッジの効いた歯切れの良いサウンドは、他のギブソンギターにはない魅力です。
ファイヤーパードのピックアップは、フルサイズのハムパッカーとほぼ同じ性能を備えているか、ヴォリュームコントロールを絞ると、ちょうどギブソンとフェンダーの中間のようなわずかに高音の勝った澄んだサウンドが得られます。セイモア・ダンカン(Seymour DunCale)などのビックアップ・メーカーは、このファイアーバード独特のサウンドを目指した製品を作っています。
ギブソン・ファイヤーバードを愛用するギタリスト
ファイヤーバードは、ロックやブルースの世界で数々の名プレイヤーに愛されてきました。
代表的な使用アーティスト
- ジョニー・ウィンター(ブルースロックの伝説的ギタリスト)
- アレン・コリンズ(レーナード・スキナード)(サザンロックの名手)
- キース・リチャーズ(ローリング・ストーンズ)(ロック界のレジェンド)
- エリック・クラプトン(「Cream」時代に使用)
- デイヴ・グロール(フー・ファイターズ)
特にジョニー・ウィンターはファイヤーバードを愛用し、そのイメージが定着しています。
ジョニー・ウィンター
激しく押し寄せるギター・スタイルは、エルモア・ジェイムズ、ゲイトマウス・プラウン、ライトニン・スリムを思わせる。テキサス生まれのジョニー・ウィンターは1969年、ギブソン・ファイヤーバードを引っさげて彗星のごとく登場。ブルース/ロックの新たな救世主として絶賛を浴びる「ローリングストーン誌一気に注日を集めたのが1968年。コロンビアと契約し、69年にメジャー・アビュー第1作「ジョニー・ウインター(johnnyWiner)」発表)。ハード・ロック寄りになった時期もあったが、やがてブルースに回帰。1970年代には師と仰くマディ・ウォーターズをプロデュースし、『ハード・アゲイン(Hard Again)』を始めとする傑作アルバムを製作。マディの偉大な復活に貢献する。スティーヴィー・レイ・ヴォーン亡き後のブルース界で、ジョニー・ウィンターは強力なブルース・バンドを率い、真のテキサス・ヒーローの名にふさわしく第一線を走り続けていた。晩年まで精力的に活動を続け、2014年に70歳で亡くなりました。
ギブソン・ファイヤーバードの代表的なモデル
モデル名 | 特徴 |
---|---|
Firebird I | シンプルな1ピックアップモデル |
Firebird III | 2ピックアップ、トレモロ搭載 |
Firebird V | 2ピックアップ、上位モデル |
Firebird VII | 3ピックアップ、ゴールドパーツ |
Non-Reverse Firebird | ボディ形状が逆の非対称デザイン |
Firebird I Firebird III
Firebird V Firebird VII
Non-Reverse Firebird
特に「Firebird V」は、バランスの取れた仕様で人気があります。
まとめ
ギブソン・ファイヤーバードは、唯一無二のデザインとサウンドを持つエレキギターです。
個性的なルックスと独特のサウンドを持つファイヤーバードは、ロックやブルースを中心に多くのギタリストに愛され続けています。
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